テジャグィ(太子鬼)
| 分 類 | 朝鮮伝承 |
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태자귀〔tae-ja-gwi〕(テジャグィ)《太子鬼》【朝鮮語】 탱자귀〔taeng-ja-gwi〕(テンジャグィ)《太子鬼》【朝鮮語】 | |
| 容 姿 | 赤ん坊の霊。 |
| 特 徴 | 人にとり憑き、予言をする。とり憑いたら祓えない。 |
| 出 典 | 成俔『慵齋叢話』(1525年)、李瀷『星湖僿說』(1760-1770年)ほか |
赤ん坊の霊魂がとり憑くと予言が的中!?
テジャグィ(太子鬼)は朝鮮半島に伝わる赤ん坊の妖怪。幼くして亡くなった赤子の霊が彷徨った末に他人にとり憑いて、呪術的な予言や言霊を行うという。 朝鮮半島のシャーマンはムダン(巫堂、무당)と呼ばれるが、特にテジャグィ(太子鬼)がムダン(巫堂)にとり憑くとミョンド(明圖)になるとされ、ムダン(巫堂)は身振り手振りと口笛でしかコミュニケーションを取れなくなり、ときどき赤子のように泣き声をあげることもあるが、霊験あらたかでよく当たるのだという。
太子鬼、返事をしたらとり憑かれる!?
李瀷(イ・イク)の百科事典的な随筆集『星湖僿說(ソンホサソル)』(1760-1770年)には、テジャグィ(太子鬼)の詳細が載っている。赤ん坊が死後、霊魂になって彷徨い、とり憑くという。その際、人の吉凶や遠方の出来事を意のままに教えてくれるという。ただし、テジャグィの恐ろしいのは、霊魂になって彷徨っているときに「おーい、あんちゃん」などと声を掛けてくる。これに油断して返事をしてしまうととり憑かれ、どれだけ祈祷しても祓っても離れなくなるという。
世有太子鬼者、小兒鬼也。小兒死、其逰魂滯魄、依附他人身上、若亾魂妖語者然也。如人之吉凶及逺地事情、輒随人意来告。謂之太子者、或者以晉太子申生故名耳。其逰魂滯魄、始飄蕩無依。閱過人家、呼以「弟子」。有應者、即留接不去。不應則、雖苦乆呼喚、終亦離違。昔聞、余親族婦女偶聞其聲、戲語謾應、鬼遂不去。雖万方祈禳、終不效。婦女以此作祟、遂不起。可以知戒矣。
世に太子鬼というものがいて、小児の霊である。子供が死んだ際、その彷徨う魂や残された魄が他人にとり憑くものであり、あたかも人が憑依されて妖しい言葉を語るような状態になる。人の吉凶や遠方の出来事などについて、尋ねればこちらの意のままにやって来て告げてくれる。「太子」と呼ぶのは、あるいは晋の太子である申生(しんせい)の故事にちなんで名付けられたのだろうか。その彷徨う魂や残された魄は、はじめ漂い歩いて頼る場所がない。家々の前を通り過ぎる時に「おーい、あんちゃん」と呼びかけ、これに応じる者がいればすぐに取りついて離れなくなる。応じなければ、いくら苦しんで長く呼びかけ続けても、最後には立ち去っていく。昔聞いた話では、私の親族の婦人が、たまたまその声を聞いてふざけて適当に返事をしたところ、鬼がついに離れなくなった。どのような方法で祈祷し祓っても、ついに効果がなかった。婦人はこれがもとで祟りを受け、起き上がれなくなってしまったという。戒めとするべきである。
(李瀷『星湖僿說(ソンホサソル)』卷五「萬物門」「小兒鬼」より)
太子鬼、必ずしも従順でない!?
また、成俔(ソン・ヒョン)が記した説話集の『慵齋叢話(ヨンジェチョンファ)』(1525年)には、テジャグィ(太子鬼)が一筋縄ではいかない妖怪であることを示すエピソードが載っている。
今有空中唱聲。憑巫覡能知往事而言之者。謂之太子。有肓張得云者。善卜筮。人皆云有明鏡數。朝廷求之。肓答以本無。囚獄而栲訊之。猶不出。安孝禮問於太子。太子云。張盲以其冊授親戚某。往藏于牛峯縣民家。其家向東有柴扉。堂前有大樹。堂中有瓮。瓮上蓋以小盤。若捲盤而視之。則冊在其中。汝若往探。則向大樹呼我。我當應之。孝禮問於盲家。果有親戚往牛峯者。孝禮大喜。卽入啓之。上命孝禮乘馹率數騎。一夜馳到其家。果有柴扉大樹。升堂有瓮。捲盤而視之。中空無一物。向樹呼太子。無應者。孝禮悵恨返問於太子。太子云。汝常以虛言誣人。故我亦以虛言誣汝矣。
今、空中で声が唱えられることがある。巫に憑いて過去の出来事を知り、それを語るものを「太子」と呼ぶ。盲目の張得云という者がおり、占いに長けていた。人々は皆、彼には『明鏡数』(占術書)があると言い、朝廷がこれを召し出そうとした。しかし、張得云はそのような書物はないと答えたため、獄に繋いで拷問を加えたが、それでもやはり出そうとしなかった。そこで役人の安孝禮が太子に尋ねたところ、太子は次のように言った。「盲目の張は、その冊子を親戚の某に渡し、牛峰県の民家に隠させている。その家の門は東に向いており、母屋の前には大木があり、堂の中には甕がある。甕の上は小さな皿で蓋がされている。皿をめくって中を見れば、そこに冊子がある。お前がもし探しに行くなら、大木に向かって私を呼べ。私がちゃんと返事をしてやろう」。孝禮が盲目の張の家に確認したところ、果して親戚の者が牛峰に行っていたという。孝禮は大いに喜び、すぐに王に上奏して許しを得た。王は孝禮に命じて駅馬に乗せ、数騎の供を率いさせ、一晩でその家へと駆けつけさせた。行ってみると、果して東向きの柴の扉があり、大木があった。堂に上がると甕があり、皿をめくって中を覗いてみたが、中身は空っぽで何ひとつなかった。大木に向かって太子を呼んでみたが、何の返事もない。孝禮は落胆し、恨めし気に戻ってきてから太子に問い質した。太子はこう言った。「お前は日頃から嘘の言葉で人を陥れているのだから、私もまた嘘の言葉でお前を欺いたのだ」
(成俔『慵齋叢話』卷三より)
盲目の張得云(チャン・ドゥグン)は占いが得意だったため、人々は彼が『明鏡数』と呼ばれる占術書を持っているという噂が流れた。朝廷は張を捕えて拷問したが、出てこなかった。役人の安孝禮(アン・ヒョレ)がテジャグィ(太子鬼)に尋ねたところ、テジャグィ(太子鬼)は『明鏡数』の隠し場所を詳細に説明した。そこで安孝禮は王の許可を得て、お供を引き連れて早馬で張の家を家探しした。テジャグィ(太子鬼)の言ったとおり、家の中には甕があり、皿で蓋がされているが、捲って中を覗いても何も見つからない。意気消沈で都に戻ってテジャグィ(太子鬼)に尋ねると、「お前はいつも嘘を吐いて人を欺くから、私も嘘を吐いて欺いたのだ」と答えたという。すなわち、テジャグィ(太子鬼)は何でも知っているが、だからと言って素直に全てを教えてくれるわけではないのである。
赤ん坊の死体から作る!?
なお、予言に長けたテジャグィ(太子鬼)であるため、テジャグィ(太子鬼)を作り出す怪しげな方法がオンライン上にはいろいろと出回っているようだ。それによれば、赤ん坊を餓死させた後、その魂を特定の媒体に込めるのだという。タイのクマントーンは胎児の死体をミイラにして憑き物にして家に福を招く。赤ん坊の死体で呪術を行うという点ではクマントーンにも似ているかもしれない。
《参考文献》
- 『한국 요괴 도감』(著:고성배,위즈덤하우스,2019年)(韓国語)
Last update: 2026/09/27
