ネルガル

分 類メソポタミア神話
名 称 𒀭𒊊𒀕𒃲 〔d.ne3-eri11-gal〕(ネルガル)【シュメル語】
容 姿ライオンの頭を象った杖を持った神。
特 徴冥界神。疫病や戦争と結びつけられた。クタ市の守護神。
出 典『ネルガルとエレシュキガル』ほか

メソポタミアの冥界神!?

メソポタミア神話に登場する疫病や戦争を司る神。太陽神とも考えられるが、正午、あるいは夏至など、一番暑いタイミングの太陽を象徴している。太陽の過酷さが人類にもたらす災禍を象徴した神で、クタ市(グドゥア)で篤く崇拝された。次第に冥界神に発展した。アッカド神話の疫病神のエラと同一視された。エンリルニンリルの息子で、エレシュキガルの配偶神。

『ネルガルとエレシュキガル』では、神々が宴会を開いたとき、冥界を離れられないエレシュキガルは、自分の代わりにナムタルを派遣した。けれども、ネルガルがナムタルを侮辱したため、エレシュキガルは激怒し、ネルガルを冥界に連行しようとする。ネルガルは14匹の悪霊を引き連れて冥府に入る。7つの門をくぐるたびに、本来、衣装を剥ぎ取られることになるが、ネルガルは2匹ずつ悪霊を引き渡すことで、何も剥ぎ取られることなく、エレシュキガルの玉座までやってくる。ネルガルは事前にエア(エンキ)から冥界の禁忌について教えられていたため、玉座を出されても座らず、パンや肉、ビールを出されても口をつけず、水を出されても足を洗わなかった。しかし、エレシュキガルは客人の前で湯浴みし、衣装を着替える。そして、最後の禁忌であるエレシュキガルの誘惑に負けて6日間、エレシュキガルと交わる。しかし、ネルガルは隙をついて冥界から地上に逃げ出す。エレシュキガルはネルガルを忘れられず、神々にネルガルを冥府に戻すように嘆願する。エア神はネルガルを匿うが、エレシュキガルはネルガルを戻さなければ、冥府の死者を地上に解放し、人間が生まれる数以上、冥界に人間を連行すると脅した。そこで、ネルガルは再び、武装して冥界を訪れ、ナムタルを打ち倒し、エレシュキガルをも殺そうとする。エレシュキガルはネルガルの妻となり、冥界の支配権を共有することを提案する。ネルガルはそれを承諾し、自由に地上と冥界を行き来できるようになった。エレシュキガルとネルガルの間には、医術神ニンアズが誕生した。

メソポタミアの占星術ではネルガルは赤い火星を象徴する。これがギリシア・ローマ世界に伝わって、戦神マルス(アレース)が火星に割り当てられた。

《参考文献》

Last update: 2020/07/24

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