哪吒太子(ナージャー・タイズー)

分 類<中国伝承道教
名 称 哪吒太子 〔nǎzhā tàizǐ〕(ナァヂャア・タイヅー)【中国語】
nézhā(ヌァヂャア、ノージャー)と発音されることもある。
哪吒太子(なたたいし)【日本語】
容 姿美しい少年神。しばしば、三面六臂の姿で六種の武器を持つ。
特 徴天帝の部下として、六種の武器を操って妖怪討伐をする。
出 典『西遊記』(16世紀)、『封神演義』(16世紀)ほか

蓮の身体を持ち、複数の武器を操る戦神!?

哪吒太子(ナージャー・タイズー、なたたいし)は道教の少年神。元々の由来はインド神話のナラクーバラで、財宝神クベーラの息子だった。クベーラが毘沙門天として仏教に取り入れられる過程で、哪吒太子も毘沙門天の陪神として仏教に取り入れられた。その後、毘沙門天が唐の伝説の武将の李靖と同一視されるようになると、道教において、李靖を神格化した托塔李天王の息子として、独自に発展して、最終的には戦神になった。

蓮の花で作られた装束をまとい、多彩な武具を操る美少年として描かれる。『西遊記』では三面六臂の術を使い、それぞれの手に斬妖剣(ざんようけん)、砍妖刀(かんようとう)、縛妖索(ばくようさく)、降妖杵(こうようしょ)、綉球児(しゅうきゅう)、火輪児(かりん)を操り、孫悟空を驚かせている。また、『封神演義』では、火尖鎗(かせんそう)、乾坤圏(けんこんけん)、混天綾(こんてんりょう)の三種を持ち、風火輪(ふうかりん)に乗って空を飛ぶ。

さまざまなヴァージョンの伝承が残されているが、多くは生まれてまだ間もない頃に東海龍王の宮殿を訪れ、暴れ回って甚大な被害を与える。その咎で、父・李靖に殺されそうになり、自ら身体を引き裂いて両親に肉体を返し、魂だけになる。そして、釈迦如来が蓮の葉や根、実などで身体を蘇生させる。『西遊記』では、哪吒は自らを殺そうとした父親に復讐しようとしており、釈迦如来が李靖に宝塔を渡し、この宝塔で哪吒の復讐心を抑えているとされる。『封神演義』では、自ら死んだときに母親に行宮を作らせ、安置した神像が3年間受香すれば復活する予定だったが、父親の李靖に見つかって行宮を破壊され、復活が阻止された。太乙真人が蓮の花に金丹を入れて肉体として復活させたというエピソードがある。

『西遊記』では、孫悟空が弼馬温(馬小屋の番)の役職に不満を持って天界で暴れたとき、父やその部下とともに討伐に出るが敗退する。孫悟空が三蔵法師に同行して取経の旅に出るようになってからは、天帝の部下として孫悟空一行を見守り、何度かその困難を救う。

なお、日本では安能務の『封神演義』の中で哪吒(ナタク)として紹介されているため、「ナタク」という呼称が広く膾炙している。しかし、「吒」は「タク」とは読まないため、誤りである。

《参考文献》

Last update: 2021/08/01

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