ナズグール

分 類現代ファンタジー(指輪物語)
名 称 nazgûl(ナズグール)《指輪の幽鬼》〔モルドール語〕
容 姿実体はなく、その姿は見えない。黒いローブだけをまとっている。
特 徴「力の指輪」を手にして冥王サウロンの忠実な僕(しもべ)となった。
出 典トルキーン『指輪物語』(1954-1955年)ほか

冥王サウロンの忠実なる僕(しもべ)!?

ナズグールはJ.R.R.トルキーンの『指輪物語』(1954-1955年)に登場する9人の邪悪な幽鬼である。

冥王サウロンは単独で「一つの指輪」を作り出し、その後、エルフたちと強力して「力の指輪」を19個作った。そして、「力の指輪」のうち3つはエルフたちに、7つはドワーフたちに、そして9つは人間たちに与えた。エルフとドワーフは堕落したが、サウロンの「一つの指輪」に屈服することはなかったが、9人の人間たちはサウロンに支配され、影の世界の住人になった。これがナズグールである。すでに人間としての意思は持っておらず、サウロンの忠実な僕となっている。実体もなくなっていて、ただ黒いローブを羽織って、黒いウマやおそるべき獣を駆って、サウロンの命に従う。昼間は視覚が働かず、嗅覚だけで世界を感知しているだけだが、夜になって闇が深くなると感覚が鋭くなり、指輪に引き寄せられてフロド・バギンズを追跡し、サウロンの闇の軍勢を率いて、エルフやドワーフ、人間たちと戦った。

ガンダルフがフロド・バギンズに説明したところによれば、指輪を持った者は死なないが、成長も活力もなく、ただ生き続けているだけで、次第にその姿は薄れていき、やがて永遠に見えなくなるという。9人のナズグールたちは、元々は偉大な王や魔術師だったが、指輪の力に依存しているうちに、次第に実体と意思を失って、サウロンの僕(しもべ)になってしまったと言える。

ナズグールは恐怖をまき散らす。また、モルグルの刃と呼ばれる細身の剣を持っていて、それで相手の心臓を突き刺すことで、刺した相手を幽界に引き込むことができる。フロドも、この武器で傷を負い、一瞬、幽界に引き込まれそうになったが、破片を取り除くことで一命を得た。

ナズグールたちは太陽の光や水は苦手で、闇が深くなればなるほど、またサウロンの本拠地であるモルドールに近づけば近づくほど強くなれた。フロド・バギンズによって「一つの指輪」が滅びの山の裂け目に投げ込まれたため、サウロンは力を失い、ナグズールたちも、サウロンと一緒に山の噴火に巻き込まれて消滅した。

ナズグールはレイスになった!?

作中のモルドールの言葉では、nazg(ナズグ)が《指輪》、gûl(グール)が《幽鬼》を意味するので、ナグズールは「指輪の幽鬼」と訳せる。トルキーンはナズグールのことを英語で「ringwraith(リングレイス)」とも記述している。

本来、レイス(wraith)はスコットランド語で《幽霊、亡霊、幻影》という意味だったが、トルキーンがナグズールをリングレイスと呼んだことから、後世のファンタジー作品では、レイスにはナズグールのイメージが重ね合わせられるようになった。

たとえば『ダンジョンズ&ドラゴンズ』では、レイスは黒いローブをまとい、ローブの中で目だけが光る実体のない姿で描かれ、非常に強力なアンデッド・モンスターとして登場している。

《参考文献》

Last update: 2023/10/12

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