ラホ

分 類フィリピン伝承
名 称 Laho(ラホ)【フィリピン諸語】
容 姿巨大な大蛇の怪物。
特 徴太陽や月を呑み込んで日蝕や月蝕を引き起こす。
出 典

太陽や月を呑み込む大蛇!?

ラホはフィリピン伝承に登場する巨大な大蛇の怪物である。主にルソン島のサンバレス地方に伝わる怪物で、太陽や月を呑み込んで日蝕や月蝕を引き起こすと信じられた。実際、タガログ族は、月蝕の際に「Linamon ng laho ang buwan(月がラホに食べられた)」という表現を用いる。

フィリピン各地の類話

なお、フィリピン各地には類似の話が多数、残っていて、たとえば、ヴィサヤ諸島のバクナワは、太古に7つあった月を6つまで食べてしまった大蛇の怪物として知られている。ミンダナオ島西部のマギンダナオではケドゥという大蛇が太陽や月を食べると信じられている。ミンダナオ島南部のダバオではミノカワと呼ばれる巨大な鳥が月を呑み込むと伝えられている。ミンダナオ島北部のブキドノンでは、タンバノカノという巨大なカニが太陽や月を攻撃すると信じられている。ミンダナオ島北部のラナオではアリマオンガと呼ばれる巨大なトラに似た怪物が月を食べてしまうと恐れられた。

このように、フィリピン各地でさまざまな形で太陽や月を呑み込んでしまう巨大な怪物が信じられ、恐れられた。

ラホはインド神話のラーフに起源を持つ!?

ちなみに、ラホはインド神話のラーフ、マギンダナオのケドゥはインド神話のケートゥにそれぞれ由来すると考えられる。古代インドでは、年老いて衰えていく神々が、不老不死のアムリタをつくって飲んだときに、神々に混ざってアムリタを飲もうとしたアスラ(魔族)が知られている。そのアスラがラーフである。太陽と月がそれに気づいてヴィシュヌ神に伝えたため、円盤で首を斬り落とした。しかし、すでにラーフはアムリタを1滴飲んでいたため、不老不死になった。そして、斬り落とされた首は、神々に告げ口した太陽と月を呑み込もうと天に昇って行った。一方、残された身体は首なしの怪物ケートゥとなって、太陽と月を攻撃したという。このラーフとケートゥの神話が、古い時代にフィリピンに伝わって、ラホ、あるいはケドゥという大蛇の怪物になったのである。

《参考文献》

Last update: 2024/05/03

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