ケリュニティス・エラポス

分 類ギリシア・ローマ神話
名 称 Κερυνῖτις ἔλαφος(ケリュニティス・エラポス)《ケリュネイアの鹿》【古代ギリシア語】
容 姿黄金の角、青銅の蹄を持った巨大な雌鹿。
特 徴矢よりも脚が速く、女神アルテミスも捕獲できなかった。ヘーラクレースが1年間追い掛けて生け捕りにした。
出 典アポッロドーロス『ビブリオテーケー』(1~2世紀頃) ほか

女神も捕まえられない俊足の雌鹿!?

ケリュニティス・エラポスはギリシア・ローマ神話に登場する巨大な雌鹿。黄金の角と青銅の蹄を持ち、矢よりも素早く動くことができた。リュカイオンの山中で5頭で草を食んでいて、狩猟の女神アルテミスが発見し、自らの聖獣とした。4頭はアルテミス自身が生け捕りにして戦車に繋いだが、残りの1頭は脚が速すぎて、女神でも捕まえることができなかった。そのため、英雄ヘーラクレースを試すために、ヘーラー女神の命令でケリュネイアの山中に放された。

ヘーラクレースはエウリュステウス王に命じられた第1の難業(ネメアーのライオン退治)と第2の難業(レルネーのヒュドラー退治)を無事に完遂した。そのため、エウリュステウス王はもっと難しい試練を考えなければならず、ケリュネイアの鹿を生け捕りにすることを命じた。この鹿はアルテミスの聖獣であるため、万が一、傷つけたらアルテミスが激怒する。エウリュステウス王はそれを期待して課した試練であった。

鹿の脚があまりにも速いため、ヘーラクレースはギリシアやトラーキア、ヒュペルボレイオスなど、丸1年間も各地で鹿を追い続けなければならなかった。しかし、ラードーン川の水を飲むために雌鹿が休んだ瞬間を捉え、ようやく捕まえることができた。その帰路、ヘーラクレースは偶然、アルテミスとアポッローンに出会った。案の定、彼らは鹿が殺されていると思い込んで激怒したが、ヘーラクレースは鹿が生きていること、エウリュステウス王に示したら必ず鹿を返還することを約束して、アルテミスの怒りは鎮まった。こうして、鹿はアルテミスに返された。

雌鹿なのに「角がはえている」!?

ケリュネイアの雌鹿には黄金の角が生えているが、当時、ギリシアには角の生えている雌鹿はいなかったので、角が生えていることもケリュネイアの雌鹿の特徴のひとつかもしれない。あるいは、ロバート・グレーヴスが提唱するように、トナカイ(雌でも角が生えている)などの話が伝わって神話の中に反映されたものかもしれない。

《参考文献》

Last update: 2021/03/21

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