ヒュミル

分 類北欧神話
名 称 Hymir(ヒュミル)【古ノルド語】
容 姿醜い巨人。髭がつららになっている。
特 徴巨大な鍋を持っていて、鍋をもらいに来たソールに挑んだ。
出 典スノッリ・ストゥルルソン『散文のエッダ』(13世紀頃)、『詩のエッダ』(13世紀頃)ほか

エール酒をつくる大鍋を所有する巨人!?

ヒュミルは北欧神話に登場するヨートゥン(巨人)である。神々はエーギルの館で宴をするために、大量のエール酒が必要で、そのための大鍋を手に入れるため、ソールテュールはヒュミルの館を訪れた。ヒュミルに歓待され、ソールは用意された食事を平らげてしまう。ヒュミルが「もう食事はない」と怒ると、ソールは巨人を釣りに誘う。沖合まで来ると、ヒュミルはクジラを釣り上げた。これ以上はこの世界をぐるりと取り囲む大蛇ヨルムンダンドの領域だとヒュミルは嫌がるが、ソールはもっと沖まで漕ぎ出す。そしてヒュミルの飼っていたウシの頭を餌に釣り糸を垂らす。ソールの釣り糸には案の定、ヨルムンガンドが食いついた。『ヒュミルの歌』では、ソールはヨルムンガンドを釣り上げて、ミュッルニルで海に沈めたという。あるいは『ギュルヴィたぶらかし』では、ソールに釣り上げられたヨルムンガンドの頭が海面から出たり入ったりするのを見て、恐ろしくなったヒュミルがソールの釣り糸をナイフで切り、ヨルムンガンドは海底に逃れたという。それでも、ソールはミョッルニルを投げつけて、ヨルムンガンドの頭を打ちつけたという。

館に戻った後、ヒュミルは絶対に割れないガラスの杯を割って見せるようにソールに挑戦する。床に叩きつけて杯を割っても、杯は元通りになってヒュミルの前に現れる。すると、ヒュミルの妻がこっそり、ヒュミルの額で割るようにソールに教えた。ソールが杯をヒュミルの額にぶつけると、杯は割れたまま戻らなかった。すると、今度はヒュミルはエール酒を鍋にたっぷりと入れて、これを持って帰れるなら持って帰るように言う。チュールがいくら動かそうとしても持ち上がらなかったが、ソールは大鍋を持ち上げて運んだ。そうするうちにたくさんの巨人たちが追ってきたので、ソールは鍋を脇に置くと、ミョッルニルで巨人たちを殺した。こうして、大鍋はエーギルの元に届けられ、神々は毎年、エール酒をたらふく飲めるようになったのである。

なお、ヒュミルはテュールの父であると記載されている。また、その姿は醜く、髭はつららになっているという。

《参考文献》

Last update: 2023/04/01

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