テュール

分 類北欧神話
名 称 Týr(テュール)【古ノルド語】
容 姿片腕の戦士。
特 徴北欧神話の勇敢な軍神。フェンリルを拘束するときに片腕を噛みちぎられた。ガルムと相打ちになる運命。
出 典『古エッダ』「ヒュミルの歌」「ロキの口論」、『スノッリのエッダ』「ギュルヴィたぶらかし」ほか

北欧神話の勇敢なる軍神!?

テュールは北欧神話に登場する軍神。もともとはインド=ヨーロッパ語族の天空神であり、主神であったとされ、ギリシア神話のゼウスやローマ神話のユーッピテル、ヴェーダ神話のデャウス・ピターと起源を同じにする神さまだと考えられている。しかし、オージン信仰が拡大する過程で、ただの軍神に転落したのだという。その証拠に古ノルド語でtýr(テュール)といえば《神》を意味する一般名詞でもある。

フェンリルに片腕を噛みちぎられる!?

テュールのもっとも有名なエピソードは、狼の怪物フェンリルを拘束するために自らの片腕を失くす神話である。フェンリルはロキが生み出した怪物だが、最初は普通の狼と変わらなかったため、オージンらの監視下に置かれていた。しかし、餌をあげる勇気があったのはテュールだけだったという。やがてフェンリルは成長し、日に日に巨大になり、力をつけ始めた。また、神々に災いをなすという予言もなされた。そこで、あるとき、神々はフェンリルを拘束しようとする。

最初はレージングと呼ばれる鉄の鎖を用意してフェンリルに、この鉄の鎖は引きちぎれまいと挑発した。フェンリルはこの挑発に乗って縛られたが、簡単にこの鎖を引きちぎってしまった。そこで次はドローミという鉄の鎖を用意してフェンリルに試させたが、これもフェンリルは簡単に引きちぎってしまった。そこで、神々は小人族のドヴェルグたちにグレイプニルという魔法の紐を作らせて、これで狼を縛り上げようとした。

しかし、レージングやドローミは鉄の鎖だったので挑発に乗っていたフェンリルだったが、今度の鎖は紐である。明らかに怪しいため、挑発には乗ってこなかった。そこで、神々はもし引きちぎることが出来なくても、必ず解放するという約束でフェンリルを縛り上げようとした。そこで、その約束の担保としてテュールが片腕をフェンリルの口の中に手を突っ込んだ。すなわち、神々が約束を破ったらこの腕を噛みちぎるということである。そしてフェンリルは縛られ、拘束された。神々は約束を守らなかったため、テュールはフェンリルに片腕を噛みちぎられた。このときから、テュールは片腕の神となったのである。

勝利を約束する軍神!?

テュールは軍神であるため、彼に祈れば勝利できるとされ、戦士たちは彼の名を唱え、彼のルーン文字(「↑」みたいな形のルーン文字)を剣に刻んだという。

この世の終焉であるラグナロクのときには地獄の番犬であるガルムと対峙し、相打ちになる運命となっている。

火曜日はテュールの日!?

ちなみに英語の曜日は北欧神話の神々と関連していることが多く、火曜日(Tuesday)はテュールの日である。しばしばローマ神話の軍神マールス(Mars)と同一視された。

《参考文献》

Last update: 2013/02/12

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