デーモン
分 類 | ユダヤ・キリスト教 |
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Demon(デーモン)【英語】 ※ δαίμων(ダイモーン)《神》に由来。 | |
容 姿 | さまざまな異形の姿。 |
特 徴 | 魔神、悪霊、魔物のこと。 |
出 典 | - |
デーモンは悪霊か!?
デーモンは英語の悪魔を意味する言葉である。同じ悪魔を意味する単語のデヴィル(devil)がもっぱらユダヤ・キリスト教の文脈としての悪魔として用いられるのに対して、デーモンはより広い意味での魔物や悪霊をも含めて用いられる。そのため、デヴィルよりも下級の悪魔という用いられ方をすることもある。また、異教の神々がユダヤ・キリスト教から魔神とされ、デーモンと呼ばれているケースも多い。中世の魔法書(グリモワール)に登場する悪霊たちもデーモンと呼ばれている。
古代ギリシアにおけるダイモーン!?
元々は古代ギリシア語のδαίμων(ダイモーン)に由来する。これは本来、《神》を意味する言葉だが、ギリシア語の《神》を意味する言葉としてはθεός(テオス)があり、普通、ゼウスなどのギリシアの神々にはこちらの語が用いられる*。一方、ダイモーンの方は、一般的には低級神、半神を意味する。あるいは英雄時代の祖霊や守護神、個人神(国家的な神ではなくて個人のための神)も含まれる。
『ソークラテースの弁明』(前4世紀)の中で、ソークラテースが内なる声(ダイモーンの声)に導かれて正しい行為を進めている様子が描写されている。また、プラトーンは『饗宴』(前4世紀)の中で「καὶ γὰρ πᾶν τὸ δαιμόνιον μεταξύ ἐστι θεοῦ τε καὶ θνητοῦ.(そして、あらゆるダイモーン的なものはテオスと人間の中間に存在する)」と説明している。
従って、本来は「悪」の性質を持つものではなかったが、ヘレニズム時代以降、ユダヤ・キリスト教の文脈の中で、テオスがヤハウェのみを指し、ダイモーンが異教の神々や悪霊などの意味を含んで用いられるようになった。
* ただし、古代ギリシアでも、ホメーロスの時代には相互に交換可能な単語として用いられている痕跡もある。
物理学やコンピュータにおけるデーモン!?
現在でも、マクスウェルの悪魔(分子を観察して、素早い分子は一方の部屋に、遅い分子はもう一方の部屋に誘導する存在)やラプラスの悪魔(全ての物質の力学的状態と力を知って計算ができる存在)など、超人的な存在のことを悪魔(デーモン)と呼ぶ。ソフトウェア業界では、OSのバックグラウンドで動作するプログラムのことも、デーモンと呼ぶ(ラテン語由来のdaemonのスペルが用いられる)。送信したメールが送り先に届かなかったことを知らせるプログラムも「メール・デーモン」と呼ばれている。
《参考文献》
- 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
Last update: 2024/10/06