ウンディーネ

分 類ヨーロッパ伝承
名 称 Undine(ウンディーネ)【ドイツ語】
Ondine(オンディーヌ)【フランス語】
Undine(アンディーン)【英語】
容 姿精霊。美しい女性。
特 徴水の精霊。魂がない。人間と結婚することで魂を得られる。
出 典パラケルスス『妖精の書』(1566年)、フーケ『ウンディーネ』(1811年)ほか

四大元素の「水」を司る精霊!?

ウンディーネは中世ヨーロッパの伝承に登場する水の精霊。16世紀のスイスの錬金術師パラケルススは『妖精の書』(1566年)の中で、風、水、火、地の四大元素にはそれぞれ精霊がいるとして、水を司る精霊としてウンディーネ(あるいはニュムペー)を挙げた。ウンディーネはラテン語で《波》を意味するunda(ウンダ)に由来し、「波の乙女」という意味。おそらくパラケルススの造語である。

四大元素に対応する四大精霊!?

古代ギリシアの哲学者エムペドクレースは「四元素説」を唱えた。彼は、世界は風、水、火、地の四大元素(リゾーマタ)から構成され、愛と憎しみによって結合したり分離したりしてできており、これらのリゾーマタは新たに生まれることもなければ、消滅することもないのだと主張した。この思想は長い間、ヨーロッパの科学者たちに支持されてきた。パラケルススは『妖精の書』でこれらの四大元素には、それぞれに対応する精霊が棲んでいると主張した。すなわち、風にはシルフ、水にはウンディーネ、火にはサラマンダー、地にはノームというわけである。

水の精霊との恋にはタブーがつきもの!?

ウンディーネは美しい女性の姿をしているが、しばしば精霊がそうであるように、魂を持たず、人間と結婚すれば魂を獲得できる。ただし、水の精霊との恋には禁忌がつきまとう。水辺でウンディーネを罵倒すると、彼女は水の世界に帰る運命にある。しかし、彼女は水の世界で生き続けているため、夫は別の女性と再婚してはならない。夫が不倫した場合、ウンディーネはやってきて夫を殺す運命にある。そして、ウンディーネは再び魂を失うという。このようなウンディーネの特徴は、さまざまなヨーロッパの水の妖精たちの特徴を踏襲したものになっていて、パラケルススは『妖精の書』で「シュタウフェンベルクのニュムペー」の物語を紹介している。シュタウフェンベルクの男が水の精と婚約したが、次第に婚約者を疎ましく思って別の女性と結婚したため、水の精の呪いで死んでしまったという。

フリードリヒ・フーケの小説『ウンディーネ』(1811年)では、この水の精霊の運命をモティーフに、水の精霊ウンディーネと騎士フルトブラントの悲恋が描かれている。フルトブラントはウンディーネと恋に落ちて結婚するが、ウンディーネの数々の悪戯に、遂に水辺でウンディーネを罵ってしまう。ウンディーネは泣く泣く水の世界に戻ってしまう。その後、フルトブラントはベルタンダへの恋心を募らせ、再婚を決意する。ウンディーネは夢の中で警告するが、結局、フルトブラントは婚礼の式を挙げてしまう。そして、花嫁の寝屋に向かおうとするフルトブラントの前にウンディーネが現れ、フルトブラントの命を奪う。

ジャン・ジロドゥの戯曲『オンディーヌ』(1939年)はフーケの小説を下敷きにした戯曲で、その後、ブロードウェイでも上演され、劇団四季も上演するなど、大ヒットとなっている。

《参考文献》

Last update: 2020/06/28

サイト内検索