シルフ

分 類ヨーロッパ伝承
名 称 Shylph(シルフ)【英語】
容 姿精霊。目に見えない。
特 徴空気の精霊。
出 典パラケルスス『妖精の書』(1566年)、ポープ『髪盗人』(1717年)ほか

四大精霊の「空気」を司る精霊!?

シルフは中世ヨーロッパの伝承に登場する風、あるいは空気の精霊。16世紀のスイスの錬金術師パラケルススは『妖精の書』(1566年)の中で、風、水、火、地の四大元素にはそれぞれ精霊がいるとして、風を司る精霊としてシルフを挙げた。シルフはラテン語で《森》を意味するsylva(シルウァ)に由来し、「森の妖精」という意味。パラケルススの造語である。

四大元素に対応する四大精霊!?

古代ギリシアの哲学者エムペドクレースは「四元素説」を唱えた。彼は、世界は風、水、火、地の四大元素(リゾーマタ)から構成され、愛と憎しみによって結合したり分離したりしてできており、これらのリゾーマタは新たに生まれることもなければ、消滅することもないのだと主張した。この思想は長い間、ヨーロッパの科学者たちに支持されてきた。パラケルススは『妖精の書』でこれらの四大元素には、それぞれに対応する精霊が棲んでいると主張した。すなわち、風にはシルフ、水にはウンディーネ、火にはサラマンダー、地にはノームというわけである。

令嬢ベリンダを護って奔走!?

パラケルススは空気のように目に見えない存在としているが、背中から2つの翅をはやした典型的な小妖精の姿で空を飛ぶイメージで想像されることも多い。その華奢な身体で風の中を自由に飛び回る。シェイクスピアの『テンペスト』(1623年)に登場する風の精霊エアリアルは、風を自在に操り、嵐を引き起こす。これはまさにシルフのイメージにぴったりである。

アレキサンダー・ポープの詩『髪盗人』(1717年)には、主人公の令嬢ベリンダに仕える守護精霊としてシルフの一団が登場する。その隊長は『テンペスト』に登場する風の精霊に因んでエアリアルと命名されている。貴族がベリンダの巻き髪を切ろうとハサミを広げたとき、シルフはそれを阻止しようとハサミの間に割って入るが、甲斐なくちょん切られて身体を真っ二つにされてしまう。けれども、元々、身体が空気で出来ているため、すぐにまたくっついて元の姿に戻る。結局、ベリンダ嬢の髪は貴族に切られて、持ち去られてしまうのである。

《参考文献》

Last update: 2020/06/28

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