海坊主(うみぼうず)

分 類日本伝承
名 称 海坊主(うみぼうず)【日本語】
海法師(うみほうし)【日本語】
海入道(うみにゅうどう)【日本語】
容 姿真っ黒い巨大な怪物。
特 徴海面から現れ、船を襲う。
出 典北尾政美『夭怪着到牒』(1788年)、松平定信『雨窓閑話』(1851年)など

海面に現れる真っ黒い巨大な怪物!?

海坊主(うみぼうず)は日本各地の沿岸部に伝わる海の妖怪。海法師(うみほうし)とか海入道(うみにゅうどう)とも呼ばれる。全身真っ黒な巨大な坊主の姿で、夜、穏やかだった海面が突然、盛り上がって、そこから姿を現すという。数メートル、ときには数十メートルのときもある。船を引っ繰り返すとか、船を呑み込むなどと言われる。無視すれば消えるとか、船に乗っている積み荷で大事なものを海に放り込めば助かるなどと言われている。

たとえば柳原紀光の随筆『閑窓自語』(1793-1797年頃)の海坊主は和泉貝塚(現在の大阪府貝塚市)に現れ、身体は漆のように黒く、半身だけを海上に現すという。菊岡沾凉の随筆『本朝俗諺志』(1746年)では、阿波(現在の徳島県)と土佐(現在の高知県)の境の沖に現れたが、高さは10丈(約30メートル)もあったとされる。

松平定信の随筆『雨窓閑話』(1851年)には、桑名(現在の三重県)に徳蔵という有名な船乗りがいて、月末に船に乗ってはいけないという禁忌を破って船で海に繰り出して、背の丈約1丈(約3メートル)の大入道が出たという。「恐ろしいか」と問われて、「世を渡ること以外に恐ろしいものはない」と応えると消えたという。

孤山居士の随筆『本朝語園』(1706年)では、海には海入道がいて、その体長は6~7尺(1.8~2.1メートル)ほどで、目も鼻も手足もないが、遭遇したときには見なかった振りをしてやり過ごさなければならないという。反応してしまうと船は沈められるという。

よく知られている海坊主の絵は歌川国芳の『東海道五十三対』にある「桑名:船乗り徳蔵の伝」で、真っ黒い姿の巨人が海面から上半身を突き出している。影のようで目だけがついている。おそらく『雨窓閑話』の徳蔵の出来事を描いたものである。

一般的には真っ黒い姿で描かれるが、北尾政美の黄表紙『夭怪着到牒(ばけものちゃくとうちょう)』(1788年)では、巨大な半魚人のような海坊主が描かれている。

これは正銘の海坊主。海中に浮かみ出、舟人を捕る恐ろしき化物なり。

(北尾政美『夭怪着到牒』より)

《参考文献》

Last update: 2026/08/01

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