テスカトリポカ

分 類アステカ神話
名 称 Tezcatlipōca(テスカトリポカ)《煙を吐く鏡》【ナワトル語】
容 姿黄色い顔に黒い横縞。切断された片足に煙を吐く黒曜石の鏡がついている。
特 徴夜、大地、黒曜石、不和、予言、魔術、争い、ジャガーの神。創造神。
出 典

テスカトリポカはアステカ神話の創造神の1柱。恵みをもたらす一方、破壊や混乱を引き起こすなど気まぐれな性質で、争いや変化、混乱を好む。アステカ人はしばしば彼に生け贄を捧げた。原初神オメテオトルの4柱の子の1柱で、しばしば兄弟であるケツァルコアトルと対の存在として描かれ、ときには争い、ときには協力して世界を創造した。

黒い身体で、顔は黒と黄色の縞模様で描かれる。片足は切断されていて、そこに黒曜石の鏡がつけられている。その鏡からは煙が出ている。

テスカトリポカの絵
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創造と破壊:4つの太陽の時代!?

アステカ神話では世界は何度も創造と破壊を繰り返していて、現在は5番目の世界(第5の太陽の時代)だとされている。最初の世界はテスカトリポカが太陽として統治した。この第1の太陽の時代は、地上には巨人族が住んでいた。しかし、テスカトリポカはケツァルコアトルによって海に突き落とされ、第1の太陽の時代は終わりを迎えた。テスカトリポカはジャガーに変身して、巨人族を全て滅ぼしてしまった。

続く第2の太陽の時代はケツァルコアトルが太陽として統治した。しかしテスカトリポカが風を吹かせ、人々も、家も、木々も、そして太陽まで吹き飛ばしてしまった。かろうじて生き残った人々も猿に姿を変えられてしまった。

第3の太陽の時代は雨と稲妻の神トラロックが太陽として支配したが、ケツァルコアトルが火の雨によって滅ぼし、生き残った人々は七面鳥に変えられた。

第4の太陽の時代は水の女神チャルチウィトリクェが支配したが、大洪水によって世界は流されてしまった。生き残った人々は魚に変えられた。しかも山々も押し流されたため、天空が崩れ落ちてきたという。

そして、2人は協力して世界再生を目指す!?

こうして4つの時代を滅ぼしたテスカトリポカとケツァルコアトルだが、ここから2人は協力して世界を再生させる。崩れ落ちた天空を支えるため、テスカトリポカとケツァルコアトルは2本の樹木に変身し、天空を押し上げた。

また、別の伝承では、海からは大地の怪物トラルテクトリが出現した。テスカトリポカとケツァルコアトルは大蛇に変身すると、この怪物と戦い、その身体を引き裂いて大地とした。なお、この戦いのときにテスカトリポカはトラルテクトリに片足をもぎ取られたため、代わりに片足に煙を吐き出す黒曜石の鏡を装着したという。これにより、テスカトリポカは未来が分かるようになったとも言われる。

1年間は神のように祀られてその後、生け贄に!?

テスカトリポカを祀る祭りとして「トシュカトルの祭り」が知られる。毎年、捕虜の中から美青年が選び出され、1年間、神のように祀られ、贅沢三昧をさせて、この祭りで祭壇の上で心臓を取り出され、テスカトリポカに捧げられる。

ちなみに煙を吐く鏡を持ち、蛇の足を生やした神さまはマヤ神話にも登場する。ボロン・ザカブ、あるいはカウィルと呼ばれる神である。血統を守り、王権を守護する神さまだったようだが、おそらく、テスカトリポカはこの神と関連している。

《参考文献》

Last update: 2021/10/16

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