オネイロス
分 類 | ギリシア・ローマ神話 |
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Ὄνειρος〔Oneiros〕(オネイロス)《夢》【古代ギリシア語】 Somnus(ソムヌス)【ラテン語】 | |
容 姿 | 黒い翼をはやした精霊。 |
特 徴 | 人々に夢を見せる。神々のメッセンジャーだが、真実の夢と偽りの夢がある。 |
出 典 | ホメーロス『オデュッセイア』(前8世紀)、ヘーシオドス『テオゴニアー』(前7世紀)など |
その夢は果たして真実なのか、偽りなのか!?
オネイロスはギリシア・ローマ神話の夢の神々である。眠っている間に、人々に夢を見させる。単一の神を指す語ではなく、夢の種類によって、さまざまなオネイロスがいる。『テオゴニアー』によれば、オネイロスは夜の女神ニュクスの息子たちで、眠りの神ヒュプノスと死の神タナトスとは兄弟である。オネイロスたちは太陽が沈む西の彼方に暮らしていて、象牙の門と磨かれた角の門のいずれから出てくる。前者の門を潜って出てきたオネイロスたちは実りのない偽りを人々に伝えるが、後者の門を潜って出てきたオネイロスたちは真実を伝えるとされた。
この象牙の門、角の門というのは、古代ギリシア語で、 κέρας(ケラス)《角》がκραίνω(クライノー)《満たす》、ἐλέφας(エレプサス)《象牙》がἐλεφαίρομαι(エレパイロマイ)《騙す》を想起する言葉遊びで、ホメーロスの『オデュッセイア』で用いられているものだが、後代の詩人たちもこのイメージを踏襲している。たとえば、古代ギリシアでは、夢占いが盛んに行われ、人々は、夢を神々のメッセージとして何とか解き明かそうとした。しばしば、象牙の門を潜ってやってくる夢があるので、人々は迷わされることになる。
なお、オウィディウス『メタモルポーセース』では、ヒュプノスの寝台がある洞窟で、モルペウス(人の姿をとる夢)、ポベートール(獣の形をとる夢)、パンタソス(物体の形をとる夢)の3つのオネイロスたち(原典ではソムヌスたちだが)が漂っている。それぞれが、さまざまな夢を見せるという。
《参考文献》
- 『ギリシア・ローマ神話辞典』(著:高津春繁,岩波書店,1960年)
Last update: 2021/09/29