桂男(かつらおとこ)

分 類日本伝承
名 称 桂男(かつらおとこ)【日本語】
容 姿手招きする巨大な男性。
特 徴月に棲み、月から手招きして寿命を縮めてくる。
出 典桃山人『絵本百物語』(1841年)ほか

月を眺めていると寿命が縮む!?

月には模様があって、古来より人々はその模様をいろいろなものに見立てて想像力をたくましくした。

古い時代の中国では、月の模様はヒキガエルに見立てられていたようだ。羿(げい)という弓の名手が、西王母から不老不死の薬を貰い受けたが、妻の嫦娥(じょうが)がその薬を盗んで飲んでしまった。そして月に逃げたという。この罰として、嫦娥は醜いヒキガエルの姿になってしまったという。

時代が降ると、月の模様はウサギに見立てられるようになる。「仙兎搗薬」と言って、西王母が命じられたウサギが臼と杵で月で不老不死の薬を搗いているのだと言われるようになった。この神話は朝鮮半島や日本にも伝わっていて、韓国や日本では、月にウサギが棲んでいて、餅をついていると信じられている。

他の地域でも、たとえばアラビア半島では吠えるライオン、南米ではワニ、南ヨーロッパではカニなどに見立てられている。

そのような見立ての中で月の模様を「手招きする男」と見立てたのが桂男(かつらおとこ)である。『絵本百物語』(1841年)に登場する日本の妖怪で、月をじぃっと眺めていると、やがて男が手招きしているように見えてきて、眺めている人間の寿命を縮めてしまうという。

竹原春泉斎の描く「桂男」

月をながく見いり居れば桂おとこのまねきて命ちゞむるよしむかしよりいひつたふ。

月を長いこと見入っていると桂男が招いて命を縮めるということは昔から言い伝えられている。

(『絵本百物語』巻第五第四十二「桂男」より)

ちなみに、和歌山県東牟婁郡の那智勝浦町には実際に桂男の伝承があって、満月ではないときに月を長く見ていると、桂男に招かれて命を落とすなどと記録されているようだ。

桂の木を伐り続ける憐れな男!?

何故、この手招きする男が桂男という名前なのかと言うと、古来より、中国では月には巨大な桂の木が生えていると信じられていたからである。この桂の木は一説では1,500メートルもあり、伐っても伐ってもすぐに元に戻ってしまうという。

中国の随筆『酉陽雑俎』(860年頃)などによれば、あるとき、仙人を目指して仙術を学んでいた呉剛(ごごう)という男が、学問に専念することを拒んでさまざまな過ちを犯して玉皇大帝を怒らせた。その罰として、月に流刑され、仙術を得るためにこの桂の木を伐るように命じられたという。しかし、いくら伐っても、桂の木はすぐに元に戻ってしまうため、呉剛は絶えず、桂の木を伐り続けなければいけないのだという。

この中国の伝承が日本に伝わって、桂男と呼ばれるようになり、遂には妖怪・桂男になったとも言われている。

《参考文献》

Last update: 2025/09/07

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