トッケビ
分 類 | 韓国伝承 |
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도깨비 〔dokkaebi〕(トッケビ)【韓国語】 | |
容 姿 | 近年では、角と牙を生やした小鬼のような姿。 |
特 徴 | 山や海に棲む韓国の悪戯好きな精霊。財産を与え、疫病や火災をもたらす。 |
出 典 | - |
トッケビは韓国の悪戯妖精!?
トッケビは韓国伝承に登場する精霊の一種である。山や海に棲む魑魅魍魎のような存在で、悪戯を好むとされ、旅人に砂を掛け、石を投げて甕を割り、釜の蓋を釜の中に入れるなどして、人々を困らせる。悪戯をやめさせるためには、トッケビの大好物のそば餅をお供えするなど、一定の祭祀が必要だと信じられていた。
トッケビ、人々に財産を授ける!?
トッケビには、人々に財産をもたらすという側面がある。たとえば、貧しかった人が急にお金持ちになったりすると、韓国では「トッケビにでも会ったのか」とか「トッケビの砧(きぬた)でも手に入れたのか」などと表現する。砧というのは、洗濯物を叩いて皺を伸ばす道具である。そして、トッケビの砧で叩くと、叩いた場所から、何でも望みのものが出現するという。その意味では、日本の「打ち出の小槌」みたいなイメージである。
民話などでも、善良な人間が運よく「トッケビの砧」を手に入れて大金持ちになる話が残されている。それを真似しようとした性格の悪い人が、反対にトッケビに散々な目に遭わされるというオチがついてくる場合も多い。
トッケビは赤い色を嫌うとされ、血を嫌がるとされる。あるとき、トッケビと仲良くなった老人がトッケビと一緒に生活する間に、次第に自分の姿がトッケビに似てきたことに驚き、トッケビの苦手なものを聞いた。トッケビは赤い血だと答えたので、老人はお金が苦手だと答えた。このやり取りの後、老人は家の壁という壁にウシの血を塗った。やってきたトッケビは驚き、次の日、家にお金を大量に放り込んで、いなくなったという話がある。こうして、老人はお金持ちになったという。饅頭怖いみたいな話であるが、トッケビが財産を与えるひとつの例である。
トッケビ、峠で相撲をとる!?
山に棲むトッケビは、多くは木々の生い茂ったところに棲んでいて、峠を越えようとする旅人の前に出没し、シルム(韓国のレスリング)を挑む。そして、これに応じないと峠を越えられないのである。トッケビは夜に峠に出没するので、トッケビを避けるために昼間に峠を越えるのがよいとされ、民話などでは、その教えを無視して夜に峠に越えようとして、トッケビとシルムで勝負をする羽目になるという話が多い。峠でトッケビにシルムで勝ったり、謎かけに答えることで、薬をもらえるなどの話も残されている。この点は、何だか日本のカッパに似ていると言える。
ちなみに、時間や場所を弁えない人間に対しては「昼に出るトッケビのようだ」と皮肉る表現がある。どうやら、基本的にトッケビは夜にしか出現しない存在だと韓国では考えられているようだ。
トッケビに祈れば豊漁!?
海に棲むトッケビは、浅瀬の干潟に棲んでいて、引き潮のときにザブンザブンと聞こえる音は、トッケビが歩く音だと信じられている。トッケビに親切にすると、魚などを網に追い込んで豊漁をもたらしてくれる。そのため、全羅道や済州島などでは、現在でも、豊漁を祈ってトッケビを祀る儀式を執り行っている地域がある。また、病気や災いをもたらすと信じられ、患者の身体からトッケビを追い払う儀式が残されている地域もある。
トッケビは火の玉にもなる!?
トッケビは、トッケビ火(ブル)という鬼火のような姿で出現することでも知られる。青い火で、不思議な動きを示すという。山道でトッケビ火に遭遇して道に迷わされ、笑われたという話がある一方で、海でトッケビ火が出現し、その火に導かれて無事に陸地に辿り着けたという話もある。全羅道や済州島などでは、トッケビ火が火災を引き起こすとして、トッケビの大好物のそば餅を備えて防火を祈った。
沖縄のキジムナーもキジムナー火となって悪戯をするので、似たようなイメージかもしれない。
トッケビは古道具が化けたもの!?
トッケビには、付喪神みたいなイメージもある。韓国では、人間が死後になる幽霊のことをグイシン(鬼神)と呼ぶが、トッケビはそういう類いのものではなく、使い古された道具(たとえば箒や火かき棒、皿など)が化けるとされる。トッケビを退治した場所に、古い箒などが残されているという話から、そのようなトッケビの側面を伺い知ることができる。
トッケビの日本残滓を排除せよ!?
実はトッケビの姿についてはさまざまに議論されていて、本来、その姿は見えないとか、トッケビ火として出現するとか、1つ目のものもいれば、女性のトッケビもいる。トッケビを漢字で「独脚鬼」と当てたこともあるため、1本足で描かれることも多い。近年では、角と牙を生やして金棒を持ったオニのような姿で想像されることが多く、韓国の漫画やアニメでもそのような姿で描かれる。
ただし、1990年代に民俗学者の金宗大(김종대、キム・ジョンデ)氏は、日本統治時代に日本のオニとトッケビが混同された可能性を指摘している。2004年に日本の鬼の要素を排除し、韓国本来のトッケビを復元しようという「トッケビ復元プロジェクト」に多額の予算がつけられるなど、トッケビが政治的に利用されている側面もある。
《参考文献》
- 『トケビ 韓国妖怪考』(著:金宗大,訳:南根祐,歴史民俗博物館振興会,2003年)
Last update: 2023/07/16