タルギャル・クィシン
分 類 | 韓国伝承、都市伝説 |
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달걀귀신〔dalgyal gwisin〕(タルギャル・クィシン)《タマゴの幽霊》【朝鮮語】 | |
容 姿 | 目、鼻、口のないのっぺら坊。あるいは卵のような身体に細い手足がついた妖怪。頭と足が逆さまとも。 |
特 徴 | 夜道で顔を奪っていく。奪われた人はタルギャル・クィシンと化す。あるいはトイレに出没する学校の怪談の妖怪。 |
韓国ののっぺら坊は恐ろしい!?
韓国にも、日本ののっぺら坊のような妖怪が棲んでいる。楕円形の頭で、目も鼻も口もないことから、タマゴの幽霊という意味で、タルギャル・クィシンと呼ばれている。韓国では非常によく知られた存在で、夕暮れ時に野山の奥深くに出没する。前を歩いていて、振り返ったら、その顔には目も鼻も口もついていない。遭遇者は驚いて魂を失って死んでしまうという。あるいは、タルギャル・クィシンは遭遇者の口から身体の中に侵入し、顔を奪っていく。そうなると、今度は遭遇者の方がのっぺら坊になってしまうとも言われている。その意味では、驚かせるだけの日本ののっぺら坊よりも悪質で、恐ろしい存在と言える。
日本ののっぺら坊が韓国に輸入されて、独自の進化を遂げたとも言われているが、はっきりしたことは分からない。韓国では、日本ののっぺら坊のことも、タルギャル・クィシンと呼んでいる。
韓国の学校のトイレには恐ろしい怪物が棲んでいる!?
タルギャル・クィシンは学校の怪談にも登場する。こちらは、卵のような楕円形の身体に、細い手足が生えた存在だ。そして、頭と足は逆さまで、頭の部分を床にトン、トン、トンとぶつけながら移動するという。トイレの妖怪で、ときには子供を食べてしまうこともあるらしい。
ある女の子が用を足そうと一番奥の個室に入ると、何者かがトン、トン、トン、と音を立てながら、入り口側の個室にやってきて、ノックする。そして「あ、いない」と呟く。また、トン、トン、トンと音を立てて移動して、隣の個室をノックし、「あ、いない」と呟く。それを繰り返して、いよいよ女の子の入った一番奥の個室の前にやってきた。彼女は恐る恐る下から覗き込むと、不気味な顔が覗きこんでいて、女の子は気絶してしまった。
別の怪談では、あるとき、男の子がトイレに行った友人を待っていたが、あまりにも遅いので呼びに行くと、トイレの個室で友人がタルギャル・キシンに食べられていた。男の子は驚いていると、タルギャル・キシンは「お腹がいっぱいになったからお前は食わないでやる。でも、今見たことは絶対に秘密にしろ」と言う。彼はタルギャル・キシンと約束をしてトイレを出る。しばらく彼はこの出来事を黙っていたが、あるとき、クラスで同級生と二人きりになったときに、つい、タルギャル・キシンの話をしてしまった。するとその同級生は突然、「話すなと言っただろう!」と叫んだ。男の子が思わず同級生の顔を見ると、その顔には目も鼻も口もなかったという話で、日本ののっぺら坊の怪談とほぼ同じ構造になっている。
ちなみに、韓国の学校の怪談には、コンコンコン・クィシンと呼ばれる上下さかさまの女子学生の幽霊の存在が知られている。トイレの個室を覗くタルギャル・クィシンの話は、怪談が伝播する過程で、コンコンコン・クィシンと混ざったのではないだろうか。
Last update: 2023/10/12