チョング

分 類朝鮮伝承
名 称 천구cheongu〕(チョング)《天狗》【朝鮮語】
容 姿丸い身体に短い手足、長い尾を持ったイヌ。
特 徴天空を駆け、地面に墜落すると地震を引き起こす。
出 典『三國史記』(1145年)ほか

長い尾を棚引かせる空を駆けるイヌ!?

天狗(てんぐ)と言えば、日本では山岳信仰や修験道、山伏などと結びついて、人間を魔道に導く山の妖怪だとされている。しかし、本来、中国で天狗(ティエンゴウ)と言えば、古来より凶事を知らせる流れ星のことを指す。稀に隕石が地表近くまで落下して空中で大爆発することがあるが、これはイヌが咆哮を上げながら天から地表に駆け下りてくるものだと考えられ、恐れられた。日蝕や月蝕を引き起こすのも天狗(文字通り、天のイヌ)の仕業だと解釈される場合があったようだ。『日本書紀』(720年)でも、舒明天皇9年(637年)に、都の空を巨大な星が雷のような轟音を立てて東から西へ流れたという記述があり、学僧が「これは天狗(あまつきつね)である」と説明している。

朝鮮にも、天を駆けるイヌとしての天狗は伝わっていて、チョングと呼ばれている。空高くに棲息しているイヌのような小動物だとされる。頭はハンアリと呼ばれる韓国の瓮(かめ)のような大きさで、手足は小さく、3尺(0.9メートル)ほどの長い尻尾が伸びている。何となくオタマジャクシに似ているフォルムと言える。毛は生えておらず、代わりに全身から毛のような小さな炎が出て、明るく燃えているという。普段は雲よりも高いところを飛び回っているが、稀に地面に墜落するときもある。そのときには物凄い速度で落下し、地面に衝突すると、その衝撃で地面が割れ、地震が発生することもあるという。

金富軾(キム・ブシク)が編纂した『三國史記』(1145年)には、667年、710年、748年に新羅(しらぎ)でチョングが現れたことが記録されている。一然(イリョン)の『三國遺事』(1280年頃)では767年に現れたという。おそらく、これらの年に隕石が降って来たということなのだろう。

『高麗史節要』(1452年)によれば、1250年に50人の生け贄がチョングに捧げられるという誤った風聞が流れたと記述されているようだ。そうであれば、チョングは人に生け贄を要求する存在、あるいは人を喰らうような存在だと人々が信じていたということなのかもしれない。

《参考文献》

Last update: 2025/05/25

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