パンチョギ
分 類 | 朝鮮伝承 |
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반쪽이 〔banjjogi〕(パンチョギ)《半分のもの》【朝鮮語】 감돌이 〔gamdoli〕(カムドリ)《柿のもの》【朝鮮語】 | |
容 姿 | 目、耳、腕、足、鼻の穴など、身体の半分しかない。 |
特 徴 | 身体は半分しかないが、武術に優れる。 |
出 典 | 孫晉泰(ソン・ジンテ)『朝鮮民譚集』(1930年)ほか |
何とも奇妙な半分人間!?
パンチョギは朝鮮半島に伝わる身体が半分しかない人間。片目、片耳、片腕、片足で、鼻の穴も片側しかない。そのため、この子供が生まれると、人々は《半分のもの》という意味で「パンチョギ」と呼んだ。しかし、身体は半分しかなくても、この子供は成長するにつれて2倍の力を発揮し、農作業や狩りで頭角を現した。妬まれて森の木に縛り付けられたときにも、木を根こそぎ引き抜いて家に戻ってきた。
パンチョギは自分も結婚したいと思って、隣りの村の裕福な家の娘との結婚を望んだ。当然、その家の父親は反対し、娘を家から連れ出せたら結婚を認めると無理難題を吹っ掛けた。そして家の警護を固めた。パンチョギは家に侵入し、次々と番兵たちを縛り上げ、遂には娘を担いで連れ出した。すると、パンチョギは美しい男性の姿になり、父親も結婚を認め、幸せに暮らしたという。
母が柿の実を半分しか食べなかったからパンチョギが誕生!?
このパンチョギは別名でカムドリとも呼ばれている。カムドリは《柿のもの》という意味だ。あるとき、子供のいない老夫婦が子供を欲した。すると、柿売りが現れて「この柿を食べると子供が生まれる」と言った。女性は半信半疑で柿を買い、戸棚にしまっておいたがが、ある日、戸棚を開けるとネズミが柿を半分、食べてしまっていた。仕方がないので女は残った半分を食べた。すると、10か月後に頭、腕、足が半分しかない男の子が生まれてきたという。これはパンチョギの誕生を説明したものである。
なお、パンチョギの誕生はいろいろな話が伝わっていて、鯉を食べると子宝に恵まれると言われて鯉を獲ったところ、ネコに半分食べられたとか、柿を半分食べて、残りを戸棚に保管して置いたらネズミに食べられたとか、柿を3つ手に入れて、2つ半だけ食べたために、2人の兄は健常者として生まれ、最後に生まれた弟だけがパンチョギになったなどの話も伝わっている。
一寸法師とパンチョギは似ている!?
日本の民話である一寸法師との関連も言われている。一寸法師も子供に恵まれなかった老夫婦が祈ると誕生したが、身長が1寸しかなく、いつまでも大きくならなかった。また、『御伽草子』などの古いヴァージョンの話では、一寸法師は長者の娘との結婚を強く望んで、策を巡らして娘を長者の家から追い出す。そして一緒に旅をして鬼退治の末に打出の小槌で元の大きさに戻り、めでたく娘と結婚する。
《参考文献》
- 『한곡 요괴 도감』(著:고성배,2019年)(韓国語)
Last update: 2025/07/05