2023年7月2日 フィリピンは多民族国家であり、土着の精霊信仰がある。

ウェブサイト「ファンタジィ事典」ではここのところフィリピン伝承を整理しているところなので、頭の整理も兼ねて、少しだけフィリピンについてまとめておこうと思う。

フィリピンと言えば、英語ネイティブで熱心なカトリック教徒の国というイメージがある。厳格なカトリックなので、法律上、離婚制度がないというのも有名な話だ。でも、実際にはフィリピンは7,000もの島々からなる多民族国家で、180以上の民族が暮らしていて、それぞれに言語もたくさんある。

フィリピンは、オランダやアメリカに植民地支配され、一時は日本にも統治された歴史を持つが、そんな歴史の中で、独立運動の中心になったのがタガログ族だった。ルソン島を中心に暮らしていて、現在、公用語になっているフィリピン語は、タガログ語を標準化したものである。セブを中心としたヴィサヤ諸島にはヴィサヤ族が暮らしていて、セブアノ語を話す。ミンダナオ島の西部やスールー諸島では、ムスリムが暮らしている。歴史的には、インドネシアやマレーシアからイスラームが流入し、15世紀や16世紀にはフィリピンにスールー王国やマギンダナオ王国などのイスラーム国家が成立している。スールー諸島やマギンダナオに点在するこれらのイスラームの民族はモロ族と呼ばれている。その他、ルソン島の山岳部などに多数の少数民族がいて、現在でも独自の文化を残している。

実際、ボクは2014年に仕事でフィリピンに行った。そのときには、サンボアンガはイスラーム過激派の拠点になっていて、ミンダナオ島は護衛警官と一緒じゃなきゃ町中を歩けなかった。また、ルソン島の山岳民族が信じる先祖霊「アニト」とされる木製の人形がたくさん売っていた(後から調べたところ、必ずしもアニトはルソン島の少数民族だけに伝わるものではなくて、フィリピン全土で信仰されていた土着の精霊信仰のようだけれど)。

それぞれの民族には、それぞれの神話があったようで、たとえば、タガログ族では、バタラと呼ばれる創造神が最高神だとされる。ヴィサヤ族ではカプタンと呼ばれる天空神が最高神だ。その他、たとえばイフガオ族であればカブニアン神、ティンギアン族であればバガトゥラヤン神、ガダン族であればナノライ神、ヒリガイノン族であればラオン神が最高神であるらしい。当然、それぞれの民族は互いに影響を与えながらも、それぞれ独自の神さまと神話を持っていたらしい。その辺の詳細は、追々調査していかなきゃいけないなあ。