ワイヴァーン

分 類イギリス伝承
名 称 Wyvern(ワイヴァーン)【英語】
Wyver(ウィーヴァル)【古英語】
容 姿2本のワシの前脚とヘビのような長い尾、コウモリのような翼を持った竜。
特 徴空を飛ぶ。尻尾に毒針を持つものもいる。
出 典

ワイヴァーンは2本脚!?

ワイヴァーンは中世ヨーロッパの紋章学の中で発展したドラゴンの仲間。2本脚で翼を持った竜で、日本ではしばしば「飛竜」などと訳される。一般的なドラゴンが4本脚なのに対して、ワイヴァーンはワシのような鉤爪の後脚しか持たず、前脚はコウモリのような翼になっている。尾はヘビのように長く、その先端は尖った矢尻のような形で描かれることが多い。

ワイヴァーンはラテン語で《毒蛇》を意味するvipera(ウィーペラ)に由来する。これが古フランス語のヴイーヴルギーヴルとなり、イギリスに伝わって転訛して、中期英語のwyver(ウィーヴァル)を経て、1600年頃に現在のwyvern(ワイヴァーン)という形になったようだ。

なお、現在の英語で《マムシ》を意味するviper(ヴァイパー)も、ラテン語のviperaが語源になっている。

紋章学の中で発展したワイヴァーン!?

イギリスでは、2本脚の竜をフランスから輸入した後、独自に紋章の図案として発展させ、テューダー朝の頃には、明確に4本脚のドラゴンと2本脚のワイヴァーンは区別されるようになったようだ。特にテューダー朝の創始者であるヘンリー7世はウェールズ系だったため、白地の旗に4本脚の赤い竜を描いて掲げた。このため、それ以外の2本脚の竜を明確に別のものとして定義する必要が生じたことが指摘されている。

紋章学ではワイヴァーンは「強い敵意」「復讐心」「忍耐」などを象徴するとされ、敵を威嚇するために盾や旗などに描かれた。イングランドのウェセックス王国では2本脚のワイヴァーンが紋章として用いられた。紋章の題材のひとつとして、図版の上で発展したものなので、ワイヴァーンには、他の怪物たちのような特別な神話や伝承はない。

ワイヴァーンはブレスを吐かない!?

現代のファンタジー作品の中でも、ドラゴンとワイヴァーンは明確に区別されている。たとえば、ドラゴンの真骨頂といえば炎のブレスを吐くことだが、対するワイヴァーンはブレスを吐かないとされることが多い。また、ドラゴンが知性的で魔法を駆使するのに対して、ワイヴァーンは知能が低いとされることもある。

これは、テーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』による影響が大きそうだ。『D&D』では、ドラゴンを知性的な存在とする一方で、ワイヴァーンは知能が低く、ドラゴンよりも下位の存在として位置づけた。ドラゴンを魔法やブレスを駆使する最強の存在と定義する一方で、ワイヴァーンの攻撃方法は噛みつきと毒針に限定し、ブレスは吐かないものとされた。

これは複数のモンスターを能力ごとに差異化していくゲーム特有の文化の影響と言えるが、『D&D』の設定を踏襲する形で、多くのファンタジー作品では、ワイヴァーンはドラゴンよりも小型で、より原始的で獰猛な捕食者として描かれることが多い。また、攻撃は主に尻尾の毒針であり、小型の身体を活かして飛行性能に特化した存在として描かれることも多い。

近年ではワイヴァーンを騎乗用の怪物として利用する作品もある。スクウェア社の『ファイナル・ファンタジーV』では、タイクーン国王がワイヴァーンを騎乗用に利用しており、国王を乗せてワイヴァーンがタイクーン城を背にして飛ぶ姿は、非常に印象的なシーンになっている。

アメリカ映画『ドラゴンスレイヤー』(1981年)に登場するドラゴン(ヴァーミスラックス・ペジョラティヴ)もワイヴァーンの一種である。

《参考文献》

Last update: 2026/05/05

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