トウン・バーンラ・ナッ
分 類 | ミャンマー伝承 |
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သုံးပန်လှ 〔θóʊɴ báɴ l̥a̰〕(トウン・バーンラ)《3度の美しさ》【ミャンマー語】 | |
容 姿 | 美しい女性。 |
特 徴 | 宮廷の女王たちの嫉妬から王宮に入れず、失意のうちに怨霊となった。 |
出 典 | - |
あまりの美しさに嫉妬され、いつまでも王宮に入れない!?
ミャンマー(ビルマ)は仏教国として知られる一方、今でも根強く土着の精霊信仰が盛んで、さまざまな精霊(ナッ)が信じられている。トウン・バーンラ・ナッは37柱の精霊ナッの1柱で、あまりの美しさから他の女王たちに王宮の立ち入りを阻止され、その怨念が精霊ナッと化した。
トウン・バーンラはモン族の村の出身の人間の女性で、その名前が「1日に3回美しい」と称されるほど美しかった。ピャーのドゥッタバウン王は彼女の美しさを聞きつけ、彼女を後宮に招き入れることとしたが、これを聞いた宮廷の他の女王たちは彼女の美しさに嫉妬し、ドゥッタバウン王に「彼女は、本当は醜く、とても太っているので、宮殿の入口を通り抜けられない」などと伝えた。これを聞いたドゥッタバウン王は女王たちのことを信じ、トウン・バーンラが宮廷に立ち入ることを拒んだ。そして、トウン・バーンラは宮殿の外の巨大な敷地を与えられ、機織りとして生計を立てることを強いられ、失意のうちに死んだ。死後、彼女は精霊ナッになったという。彼女の織機は石に変わり、現在でも残っているという。
あるいは別のヴァージョンでは、嫉妬した宮廷の他の女王たちがゾウを引き連れてくるように指示し、家来が王に「(ゾウのために)宮殿に入れない」と伝えたのを、ドゥッタバウン王が、彼女が太っていて入れないと誤解したと伝える。いずれにせよ、トウン・バーンラは宮殿に入ることができずに失意のうちに亡くなる。
ドゥッタバウン王の宮殿があったタイェーキッタヤーには、彼女に由来する地名がたくさんある。リン・ルワン・タウンは《夫の不在を寂しく思う山》という意味で、宮殿に入れてくれるようにトウン・バーンラが待った場所とされる。また、レッテー・カンは《爪の池》という意味で、彼女が王を待つ間、地面を爪で掘っているうちに池になったという場所である。
トウン・バーンラ・ナッ、娘と一緒に精霊ナッと化す!?
トウン・バーンラには2歳の娘がいて、その娘も彼女が失意のうちに死んだときに、一緒に死んで、シンネミ・ナッという精霊ナッになったという。また、別伝として、トウン・バーンラは、マウン・ティン・デ(後のマハギリ・ナッ)の末の妹という形で、娘とともに「マハギリ神話」に取り込まれた。
《参考文献》
- 『The Thirty-Seven Nats: A Phase of Spirit-Worship prevailing in Burma』(著:Sir Richard Carnac Temple,1906年)
Last update: 2021/09/30