タウングー・ミンカウン・ナッ

分 類ミャンマー伝承
名 称 တောင်ငူရှင်မင်းခေါင်နတ်tàʊɴŋù ʃɪ̀ɰ̃ mɪ́ɴɡàʊɴ naʔ〕(タウングー・シン・ミンカウン・ナッ)【ミャンマー語】
容 姿王族の衣装を纏い、団扇を持った男性の精霊。
特 徴タウングー王。赤痢で療養中に玉ねぎの匂いで死んでナッと化した。
出 典

出産で母は死んだが、息子はタウングー王に!?

タウングー・ミンカウン・ナッはミャンマー伝承に登場する37柱の精霊ナッの1柱である。元々は16世紀のタウングー朝のタウングーの副王で、死後、ナッと化した。

タウングー朝はパガン王朝に次ぐビルマ史上で2番目の統一王朝で、特にタビンシュエーティー王(1516-1550年)の時代には、ペグー朝に攻め込んで、首都ペグーを陥落させ、モン族を平定し、中央ビルマ全土の統一に成功した。

タビンシュエーティーの乳母を務めていたミャウッペッ・シンマは出産の際に死に、死後、精霊ナッと化したが、出産した赤ん坊は無事に成長して成人した。それがミンカウン2世で、タビンシュエーティーの死後、ミンカウン2世がタウングー王に任命された。しかし、すでにタビンシュエーティーの時代に、首都はタウングーからペグーに移っていたため、実質のタウングー朝の王はペグーに居を構えたミンカウン2世の兄であるバインナウンで、ミンカウン2世はタウングーという都市の王(副王と呼ばれる)だった。ミンカウン2世は、その後、長い統治の末、赤痢に掛かった。そこで療養のためにタウングーを離れ、シッタン川を訪問しているときに、玉ねぎの香りに当てられて死んだ。そして、死後、精霊ナッと化した。タウングー・ミンカウン・ナッは、王族の衣装を身に纏い、団扇を持った姿で描かれる。

ちなみに、人間が死後、精霊ナッとなる場合、その多くは非業の死を遂げる。その観点では、ミンカウン2世は出産こそドラマティックだが、死はあまり暴力的なイメージはない。一方で、彼の曾祖父に当たるミンカウン1世は、使用人に何度も剣で切り刻まれて殺されている。そのため、タウングー・ミンカウン・ナッは、実際にはミンカウン1世と混同された可能性も指摘されている。

《参考文献》

  • 『The Thirty-Seven Nats: A Phase of Spirit-Worship prevailing in Burma』(著:Sir Richard Carnac Temple,1906年)

Last update: 2023/02/26

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