タンジュオ(呑舟魚)

分 類朝鮮伝承
名 称 탄주어tan-ju-eo〕(タンジュオ)《呑舟魚》【朝鮮語】
容 姿体長30~70メートルの巨大な魚。
特 徴舟を丸呑みにする。
出 典金富軾『三国史記』(1145年)、李瀷『星湖僿説』(1760-1770年)ほか

舟を丸呑みほどの魚:朝鮮の巨大魚伝説

タンジュオ(呑舟魚)は朝鮮半島の伝承に登場する巨大な魚。その名前が示すとおり、船をも飲み込むほどに大きい。その正体はクジラだとも言われているが、クジラよりもはるかに大きい可能性もある。東海(トンヘ、日本海のこと)の近海などで頻繁に発見され、人間を食らう様子もしばしば目撃されている。

金富軾(キム・ブシク)の『三国史記(サムグクサギ)』(1145年)の第11巻では、唐城郡の南側に、長さ40歩(30~70メートル)、幅6丈(約18メートル)に及ぶ巨大な魚の遺骸が出現したという記録がある。

柳夢寅(ユ・モンイン)『於于野譚(オウヤダム)』(1621年頃)でもタンジュオ(呑舟魚)だと推測される巨大な魚が登場する。アワビを採る海女たちは、この巨大な魚が大きな音を聞くと驚いて逃げ出す性質を知っていたため、常に鈴を身に着けて海に潜っていたなどと記されている。

李瀷(イ・イク)の百科事典的な随筆集『星湖僿説(ソンホサソル)』(1760-1770年)でもタンジュオ(呑舟魚)は生け捕りにすることが難しく、人々が目にするのは決まってその遺骸であると説明している。また、3人の男たちが船に乗っていたところ、突然、巨大な魚に飲み込まれた。急に辺りが真っ暗になったため、魚の腹の中にいると悟った彼らは、持っていた刃物で腹の中を四方八方切り刻んだ。すると、魚が堪えきれずに彼らを吐き出した。2人は無事に生還したが、頭が熱で焼けて皮膚が剥がれ落ち、二度と毛が生えることはなかったというエピソードも紹介している。これは胃液でやられるということを意味しているのかもしれない。

中国古典における比喩表現としての「呑舟之魚」

ちなみに、古代中国においても「呑舟之魚」としてしばしば文献に登場する。たとえば、『荘子』では「呑舟の魚も蕩して水を失えば、螻蟻に制せらるるは、その居を離るればなり」とある。舟を丸呑みにするような巨大な魚であっても、ひとたび棲み処を離れて水を失ってしまえば、オケラやアリにも制されてしまうというわけで、どんな才能のある人物でも、それに相応しい地位や役職を与えないとその能力を発揮できないという意味である。

『列子』では、「呑舟の魚は支流には遊ばず」という表現があって、大物は小さいことにはこだわらないということを意味する。

『史記』の中で、司馬遷は「網、呑舟の魚を漏らす」という表現を用いて、秦の時代の厳格すぎる法を批判し、漢の時代の法規制いかに寛大であったかを表現している。舟を丸呑みにするような巨大な魚でも通り抜けられるほど寛大な法律だという意味である(ただし、現代では、ザルのような法律を批判するようなネガティヴな諺として用いられることが多い)

このように古代中国では「舟を丸呑みにする魚」という比喩的な表現で用いることが多いが、朝鮮半島では実在する具体的な生物として描かれている。

《参考文献》

  • 『한곡 요괴 도감』(著:고성배,2019年)(韓国語)

Last update: 2026/03/01

サイト内検索