タンバノカノ

分 類フィリピン伝承
名 称 tambanokano(タンバノカノ)【フィリピン諸語(マンダヤ語)】
容 姿巨大なカニの怪物。
特 徴潮の満ち引きや洪水を引き起こす。月蝕も引き起こす。
出 典

潮の満ち引きは巨大なカニの仕業!?

タンバノカノはフィリピン伝承に登場する非常に巨大なカニの怪物。黄金の甲羅を持つとも言われている。ミンダナオ島のマンダヤ族やブキドノン族の神話に登場する。マンダヤ族やブキドノン族の神話では、タンバノカノは太陽と月の子供の1人とされていて、海底深くにある「ブルンガン(burungan)」と呼ばれる巨大な穴に棲んでいる。この穴はミンダナオ島の人々の世界観では「世界のヘソ」だとされていて、このタンバノカノがブルンガン(穴)を出ると穴に水が流れ込んで潮が引き(干渉)、タンバノカノが穴に戻ると水が流れなくなって潮が満ちる(満潮)と信じられた。要するに、タンバノカノが海の栓の役割を果たしているというイメージなのかもしれない。実際、ブキドノン族にはタンバノカノがブルンガンをずっと塞いでしまったため、海水が溢れ出して大洪水が起きたとする神話もある。

また、タンバノカノが動き回ることで波が発生するとされている。巨大なハサミを動かすだけで、高波が起こると信じられていた。

似たような話として、朝鮮半島のテジョムオ(大点魚)がいる。テジョムオは巨大なナマズの妖怪で、海の底の洞窟を出入りすることで、潮の干満を引き起こし、ときには暴れてを津波を引き起こすという。

月に見捨てられた怪物!?

タンバノカノは恐ろしい姿をしていたため、母親である月に見放されて海底に追いやられてしまったという。そのため、ときどき、タンバノカノは月を呑み込もうとする。このときに月蝕が起こると信じられた。日本では月の模様はウサギが餅をついている姿だと説明されるが、マンダヤ族やブキドノン族は、タンバノカノが「ハサミの跡」を月に残したのだと説明している。マンダヤ族やブキドノン族は、月の満ち欠けと潮の満ち引きの関係性を観察していたのだろうか。

タンバノカノとタンバナカワ

ミンダナオ島のマノボ族には似た名前のタンバナカワという怪物がいる。こちらも月蝕を引き起こす恐ろしい怪物だが、タンバノカノが巨大なカニの怪物だとされるのに対して、タンバナカワはクモやサソリなどの足がたくさんある怪物として想像されている。また、タンバノカノが潮の満ち引きと強く結びつけられるのに対して、タンバナカワにはそのような側面はなく、月蝕を説明する怪物としての側面が強い。フィリピンにスペイン人が入植した際にたくさんの民俗学調査が行われている中で、タンバノカノとタンバナカワが混同された可能性もあれば、元々同一のものを別々のものとして捉えている可能性もある。フィリピン諸語において「tamban(タンバン)」は「海の生物」に用いられる接頭語であり、kanoやnakauは奪うとか食べるという意味の語根だと考えられているため、どちらも「奪う海の主」というニュアンスの言葉になる。

《参考文献》

Last update: 2026/01/31

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