シュムプレーガデス
分 類 | ギリシア神話 |
---|---|
Συμπληγάδες 〔Symplēgádes〕(シュムプレーガデス)【古代ギリシア語】 ※ 単数形はΣυμπληγάς(シュムプレーガス)《ぶつかり合うもの》。 | |
容 姿 | ぶつかり合う2つの巨大な岩。 |
特 徴 | 狭い海峡で岩がぶつかり合って通行する船を押し潰す。 |
出 典 | アポローニオス『アルゴナウティカ』(前3世紀頃)、アポッロドーロス『ビブリオテーケー』(1~2世紀)ほか |
岩と岩がぶつかって船を押し潰す!?
シュムプレーガデスはギリシア・ローマ神話に登場する巨大な岩で、英雄イアーソーン率いるアルゴー号の行く手を阻んだ。巨大な岩と岩に挟まれた航路で、岩の根本は繋がっておらず、絶えず岩と岩はぶつかり合って、周囲には岩の衝突音が鳴り響き、衝撃で海水が上空へと噴き上がっていた。イアーソーンは予言者ピーネウスの助言に従って、まずは一匹の鳩を飛ばした。狭い海峡を鳩は飛んでいき、岩と岩はぶつかり合ってひとつになった。しかし、鳩は尾羽の先端を失ったものの無事に通り過ぎた。イアーソーン一行は鳩が無事に通り過ぎたことを確認すると、岩が2つに分かれて開き始めた瞬間、船を漕ぎ進め、岩と岩の間を全速力で進んだ。岩と岩の間が狭まり、海面はどんどんと盛り上がった。一行は必死に船を漕いだ。女神ヘーラーはイアーソーンを庇護していたため、差し向けられたアテーナーが船を強く前に押し出した。船は矢のように空中を飛んでいき、アルゴー号が通過したその瞬間に、岩と岩が衝突した。船尾の先端が岩によって一部、切り取られたが、無事にイアーソーン一行はこの難所を通過できたという。
アルゴー号がこの海峡を通過して以降、シュムプレーガデスは大地に根を張って二度と動かなくなったという。というのも、もしも船が1隻でも通り抜けたら、岩は動かなくなることを神々は定めていたのである。ちなみに、シュムプレーガデスは現在のボスポラス海峡(現在のトルコ)にあったと信じられている。
イタリアにも漂う岩礁!?
ギリシア・ローマ神話には、他にも海に漂う岩礁の伝承が知られている。イアーソーン一行が帰路に通ったシチリア島沖(現在のイタリア)には、プランクトス(一般的には複数形のプランクタイ)と呼ばれる海を漂う岩礁の群れがあった。これも海を漂いながら、船にぶつかり、船を破壊する恐ろしい岩礁だった。シュムプレーガデスとプランクタイはしばしば混同され、同一視されることもあるが、アポッローニオスは明確に区別しており、往路で通過したのがシュムプレーガデス、帰路に通過したのがプランクタイだとしている。プランクタイの周辺にはセイレーンやスキュッラ、カリュブディスなど、たくさんの海の怪物たちが棲んでいて、恐ろしい難所だったようだ。
《参考文献》
- 『アルゴナウティカ アルゴ船物語』(著:アポロニオス,訳:岡道男,講談社文芸文庫,1997年)
- 『ギリシア神話』(著:アポロドーロス,訳:高津春繁,岩波文庫,1953年)
Last update: 2024/06/30