クイニャップチャン

分 類ベトナム伝承
名 称 Quỷ Nhập Tràng(クイ・ニャップ・チャン)《腸に入り込む魔物》【ベトナム語】
容 姿普通の人間の姿。
特 徴死にかけの人間にとり憑く。常に空腹で家畜や子供などさまざまなものを貪り喰う。
出 典

死にかけの人間がとり憑かれる!?

クイニャップチャンはベトナムに伝わる人間にとり憑く系の妖怪である。

例えば、年老いて寝込んでしまった人が突然、起き上がって、元気に活動し始める。こういうときはクイニャップチャンにとり憑かれているかもしれない。クイニャップチャンにとり憑かれた人間は、空腹を訴えて、常に食べ物を要求して、イライラしている。昼間は寝ていることが多いが、夜になると台所に行って食べ物を探す。ときにはネズミや昆虫を捕まえて食べることもある。

段々とクイニャップチャンの活動はエスカレートしていき、村の中でニワトリやアヒルなどが食い散らかされるようになる。その後、ブタやウシなどの家畜も襲われる。それからしばらくして、人間の子供が行方不明になる。そして、人々は村にクイニャップチャンが現れたのだと気づくわけである。

その正体は幽霊!?

クイニャップチャンの正体は幽霊だと説明されることが多い。恨みや怒りを持った幽霊が現世を彷徨っていて、死にかけの人間、あるいは死体を見つけると、体内に入り込んで、生前のようにその人間を動かすという。

あるいは幽霊は黒いオオヤマネコ(ベトナムでは「リンミャウ(linh miêu)」と呼ばれる)を宿主にしていて、オオヤマネコが死体を飛び越えることで、死体にとり憑いてクイニャップチャンになるとも信じられている。だから、葬式などで棺桶の上を黒いオオヤマネコが飛び越えると、棺桶の中の死人が蘇って人々を襲い始めるみたいな物語は、ベトナムでは広く知られている。そのため、今でも、遺体を守るために棺桶の周りにおがくずを撒いたり、動物を閉じ込めたり、遺体の上にバナナを置いて獣の注意をバナナに向けたりすることがある。

クイニャップチャンの特徴とは!?

クイニャップチャンは誰かにとり憑くため、周囲の人々がそれに気づかないことが多い。もうすぐ死んでしまうものだと思っていた祖父母が急に元気になるので、家族が喜ぶことが多い。しかし、生きているときのその人とは多くの場所で異なる特徴が観察できる。たとえば、憑依された人は背骨が硬直している。昼も夜も眠らずに起きている。ガラスや釘などを踏んづけて怪我しても気づかない。鏡を避け、火を恐れる。

何よりも、クイニャップチャンはたくさん食べるくせに、食べ物は一切、消化されずにそのままである。身体は死んでいるので、臓器が機能していないのかもしれない。また、かすかな悪臭がする。クイニャップチャンが座った場所には、黄色く粘った水たまりができるとも言われる。クイニャップチャンがいる家では、食べ物がすぐに腐るようになる。

クイニャップチャンにとり憑かれた人間を救ってやるためには、徳の高い僧侶を呼ぶ必要があるようだ。もちろん、クイニャップチャンを追い出したとしても、大抵の場合、とり憑かれていた人間はすぐに死んでしまう。

《参考文献》

Last update: 2025/01/25

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