カザモツワケノオシヲ

分 類日本神話
名 称 風木津別之忍男神(カザモツワケノオシヲ)〔記〕【日本語】
容 姿
特 徴イザナキとイザナミの神生みの7番目に生まれた神。家宅六神。
出 典『古事記』(712年)ほか

風から国土を守る神!?

カザモツワケノオシヲは日本神話に登場する神で、イザナキイザナミの7番目の子だが、名前の読み方や意味、役割はよく分からない。

『古事記』では、イザナキとイザナミは国土を生み出した後、多数の神々を生み出す。最初に生まれてくる7柱の神々は『古事記』のみに登場する神々で、抽象的でよく分からない。一説では住居に関わる神々とされる。その後は、海の神、河口の神、風の神、木の神、山の神、野の神、船の神、食べ物の神、火の神が順に生まれてくる。そして、火の神を生んだことでイザナミは大火傷をする。苦しむ彼女からは吐瀉物や糞、尿などが撒き散らされ、そこから金属の神、土器の神、水と農業の神が生まれてくる。結局、イザナミは火傷が原因で亡くなってしまい、イザナキとイザナミの神生みは終わりを迎える。

さて、『古事記』の「神生み」で7番目に生まれたとされる神が「風木津別之忍男神」である。この神の役割どころか、読み方についても定説はなく、その正体はよく分からない。『古事記』には注がつけられていて、「風」の読み方は「カザ」と指定されている。「木」は音読みとすることが記述されているが、実際、何と読むのか判然としない。そのため、「風木津」は「カザモツ」、「カザモクツ」、「カザケツ」など、いろいろな読み方が提案されている。カザモツを《風・持つ》と解釈して風と結びつける説もあれば、「木」を字義どおり《木》と関連のある神とする説もある。

先に生まれたオホコトオシヲが「神生みの宣言」をして、イハツチビコイハスヒメが「国土に大地ができた」こと、オホトヒワケが「土地に日が射した」こと、アメノフキヲが「天から(霊気を)吹きつけた」こと、オホヤビコが「国土に樹木が生えた」ことを表し、カザモツワケノオシヲが「風から国土を守る」ことを示すと解釈することもできるが、実際のところはよく分からない。

国学者の堀秀成は『神名考』(1909年)の中で、「風木」を「千木」と解釈している(東風を「コチ」と読むように、風は「チ」とも読める)。千木は屋根の上につける風除けの装飾であることから、防風の神ではないかとも解釈されている。このため、住居に関わる「家宅六神」の1柱とも解されている。オホコトオシヲに続いて生まれたイハツチビコ、イハスヒメ、オホトヒワケ、アメノフキヲ、オホヤビコ、カザモツワケノオシヲの6柱の神々を「家宅六神」として、住居の構造や材料を表す神と考える説があり、この場合、カザモツワケノオシヲは、千木を表すと解釈され、防風の役割を負っているとされる。イハツチビコとイハスヒメが家の土台、オホトヒワケが門戸、アメノフキヲが屋根、オホヤビコが家そのもの、そして、カザモツワケノオシヲが風で屋根が吹き飛ばされないようにする機能を表現しているとされる。ただし、「国生み」から「神生み」に移る神話の流れの中で、イザナキとイザナミが最初に住居に関わる神々を生むことの妥当性には疑問が残る。

既生國竟、更生神。故、生神名、大事忍男神。次生石土毘古神(訓石云伊波、亦毘古二字以音。下效此也)、次生石巢比賣神、次生大戸日別神、次生天之吹(上)男神、次生大屋毘古神、次生風木津別之忍男神(訓風云加邪、訓木以音)、次生海神、名大綿津見神、次生水戸神、名速秋津日子神、次妹速秋津比賣神。(自大事忍男神至秋津比賣神、幷十神。)

すでに国を生み終えたので、さらに神を生んだ。そこで、生んだ神の名はオホコトオシヲ。次にイハツチビコを生み、次にイハスヒメを生み、次にオホトヒワケを生み、次にアメノフキヲを生み、次にオホヤビコを生み、次にカザモツワケノオシヲを生み、次に海の神、名はオホワタツミを生み、次に水戸神、名はハヤアキツヒコと妹のハヤアキツヒメを生んだ。(オホコトオシヲからアキツヒメまで、合わせて10柱の神である。)

(『古事記』上つ巻「神々の生成」より)

《参考文献》

Last update: 2023/01/09

サイト内検索