イムギ
| 分 類 | 朝鮮伝承 |
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이무기 〔i-mu-gi〕(イムギ)【朝鮮語】 | |
| 容 姿 | 大蛇の姿。角はない。 |
| 特 徴 | 1,000年の修行をして龍になろうとしている。多くの場合、失敗する。 |
| 出 典 | 李瀷『星湖僿説』(1760-1770年)、李圭景『五洲衍文長箋散稿』(19世紀中頃)ほか |
龍になれなかった怪物!?
イムギは朝鮮半島の伝承に登場する大蛇の怪物。鎧のような鱗で覆われ、手足のない大蛇のような姿で、中国の蛟龍に似ているとされているが、角はていないとされる。
朝鮮半島では、イムギは洞窟や水の中で1,000年の修行を積むと龍になって昇天すると信じられている。しかし、イムギが龍になり損ねる物語の方がたくさん残っていて、一般的なイムギは、龍になり損なった怪物というイメージだ。
イムギが龍になるためには、厳しい条件や試練を乗り越える必要がある。よく言われているのが、龍の力の源である「如意珠」を手に入れることだ。偶然、空から落ちてくるのを拾うか、善行を積んで誰かに授けてもらう必要があるが、なかなか容易ではない。
また、1,000年の修行を経ていよいよ昇天する際、天に昇るイムギを目撃した人間が「龍だ!」と言えば、龍になれるが、「ヘビだ!」と言われてしまうと、あっという間に墜落して龍になり損なうという物語がよく語られる。龍になり損なうと、イムギは再び1,000年の修行をしなければならないのである。
ある昔話では、昇天するイムギを見て、老婆が「ヘビだ」と言ったが、負ぶわれていた子供が「いや、龍だよ」と言い直したおかげで無事に昇天できたという話も残っている。
イムギというのは、切実に龍になりたがっている存在だが、だからと言って品行方正なわけではない。人助けをして善行を積むイムギも存在はするが、多くの場合、イムギは沼の主として周辺の村に生贄を要求したり、村を訪れて家畜を喰らったり、通行人を襲ったりする粗暴な怪物として描かれることが多い。結局、完璧な龍にはなれていない不完全な存在がイムギの特徴とも言える。
また、龍になり損なった後に、そのまま地上で悪さをする場合もある。カンチョリなどは、イムギが昇天に失敗し、その恨みによって凶暴化した姿だと説明されることも多い。ただし、カンチョリの場合、四足獣で描かれるのに対して、イムギは一般的には大蛇のような姿で描かれる。
李瀷(イ・イク)の百科事典的な随筆集『星湖僿説(ソンホサソル)』(1760-1770年)では、イムギは深い淵に潜んでいるが、ひとたび飛び出すと天に昇る。そのときには風と雷が後に続くという。その身体は鎧のような鱗で覆われていて、弓矢で仕留めることはできないとされている。
李圭景(イ・ギュギョン)が執筆した百科事典『五洲衍文長箋散稿(オジュヨンムンジャンジョンサンゴ)』(19世紀中頃)には、イムギの目が丸いという記述が残されている。これは、一般的に中国の龍が目は鋭いとされていることに対して、イムギがまだ龍になっていないことを表現しているものと考えられる。
柳夢寅(ユ・モンイン)の『於于野譚(オウヤダム)』(1621年頃)には、大砲職人がイムギを退治する物語が載っている。大砲職人は研いだ刀を道の真ん中に列をなして突き立てておいた。すると、イムギがそこを通り過ぎ、腹が裂けて死んだという。腹の中からは真珠や玉石、夜光珠、照乗珠などが出てきたという。
《参考文献》
- 『한곡 요괴 도감』(著:고성배,2019年)(韓国語)
Last update: 2026/01/29
