生霊(イキリョウ)

分 類日本伝承
名 称 生霊(イキリョウ)【日本語】
容 姿抜け出した人間と同じ姿や首だけ、あるいは物の怪になるなど。
特 徴生きたまま、霊魂が身体から抜け出して怪異を起こす。
出 典『源氏物語』(11世紀)ほか

生きたまま、霊魂が身体から抜け出す!?

生霊(イキリョウ)は、生きている人間の霊魂が体の外に出て動き回るもので、反対に、死んだ後に動き回る霊魂(普通はこちらだが)は「生霊」に対して「死霊」と呼んだりする。

有名なところでは平安時代中期の『源氏物語』(11世紀)に登場する六条御息所が、寝ている間、強い嫉妬から「生霊(いきすだま)」になって源氏の子を宿す葵の上の前に物の怪として出現する。本人は自覚がなく、目覚めたときに自分の身体に魔除けの芥子の匂いがすることから、自分が生霊になって葵の上を襲っているのだと気がついて戦慄する。平安時代後期の『今昔物語集』(12世紀頃)にも「近江国の生霊が京に来りて人を殺す話」というのがあり、妻の生霊が夫を病にして殺してしまう話が載っている。

江戸時代の奇談集『曽呂利物語』(1663年)には「女の妄念迷ひ歩く事」という話があり、夜、女の生霊が首だけになって徘徊する。女の生首が空から舞い降りるのを目撃した男が斬りつけると、首は逃げていき、ある家まで追い詰めた。すると、家の中にいた女が目を覚まして、「男に斬りつけられて逃げる夢を見た」と語る。女の生霊が生首の形になって外を飛び回ったという物語であるが、ここでも、寝ている女は自覚がない。なお、これは抜け首(ヌケクビ)という轆轤首(ロクロクビ)の一種とされる。

このように、魂が身体から抜け出してしまうことを、江戸時代には「離魂病」とか「カゲワズライ」などと呼んで、病気の一種と解釈していた時代もあった。現代で言うと「幽体離脱」みたいなものかもしれない。

《参考文献》

Last update: 2020/04/18

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