バンシー
分 類 | イギリス伝承(アイルランド) |
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Bean Sí(バンシー)《妖精の女》【アイルランド語】 Banshee(バンシー)【英語】 | |
容 姿 | 暗いマントをまとった女性。青ざめた顔、泣きはらした赤い目。 |
特 徴 | 旧家の家人の死を予告して泣く。 |
出 典 | - |
人間の死を予言して泣く女の妖精!?
バンシーはアイルランドやスコットランドの伝承に登場する妖精で、緑色の服に灰色のマントをまとい、流れるような黒髪に青ざめた顔、泣きはらしたような真っ赤な目をしているという。バンシーは旧家の家人の死を予告する。その家の誰かが亡くなる直前、その家にやってきてヴェールで顔を覆いながらさめざめと泣き、そして、ものすごい叫び声をあげる。バンシーが泣いているときには近いうちに誰かが亡くなる。大抵は一人で出没するが、立派な人や勇敢な人、徳の高い人などが亡くなるときには複数のバンシーが出現して泣くこともあるという。旧家の人々にとっては、バンシーの出現は不幸なことでありながらも、ある種、誇らしさも含む複雑な感情があったようだ。
川で泣き叫びながら、死装束を洗濯して家人の死を知らせるバンシーもいる。これは亡くなる人の死装束だとされ、スコットランド高地では、こういうバンシーはベン・ニーァ(《洗う女》という意味)と呼ばれている。
1692年にスコットランドのグレンコー村で虐殺があったときには、マクドナルド一族の家が次々と焼かれて殺されたが、おびただしい数のバンシーたちが夜ごとに叫ぶ声が聞こえたという。
ワイルド夫人(Jane Francesca Wilde,1826-1896年)によれば、スコットランド高地のバンシーは醜く、アイルランドのバンシーは美しいらしい。また、一説によれば、バンシーはかつてその家系で若くして処女のまま亡くなった女性の幽霊だとされ、生き残っている身内の死を予告するのだという。スコットランドのベン・ニーァは出産の際に亡くなった女性の幽霊だとも言われている。
バンシーは他の妖精と同様に、どこか身体に欠陥があるとされ、たとえば、鼻の穴がひとつしかなかったり、前歯が大きく突き出していたり、乳房がだらりと垂れていたりする。乳房がだらりと垂れている場合、泣き叫ぶバンシーにそっと近づいて、その乳房を吸うことができた大胆な人間は、バンシーの養子になる権利を主張でき、彼女に願いごとを叶えてもらえるらしい。
《参考文献》
- 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
- 『妖精 Who's Who』(著:キャサリン・ブリッグズ,訳:井村君江,ちくま文庫,1996年〔1979年〕)
- 『妖精事典』(編著:キャサリン・ブリッグズ,訳:平野敬一/井村君江/三宅忠明/吉田新一,冨山房,1992年〔1976年〕)
Last update: 2024/04/26