2021年9月23日 ファンタジィの源流

ボクはウェブサイト「ファンタジィ事典」を運営している。その対象の範囲は「世界各地の神話や伝承の事典。古代の神話から都市伝説やUMA(未確認動物)まで」であり、「架空の存在でありながら、その存在が実在と信じられたもの」を『世界の妖怪』と定義して、「ファンタジィ」に関する言葉を事典形式で整理している。その一方で、実のところ、あんまり深く「ファンタジィ」という言葉を定義してこなかった。漠然と「ファンタジィ」という言葉を使っているけれど、さてはて、「ファンタジィ」って何だろう。

たとえば、ファンタジー小説の「ハリーポッター・シリーズ」は、分類として間違いなくファンタジィだ。映画『風の谷のナウシカ』もファンタジィ。RPGの「ドラゴンクエスト・シリーズ」や「ファイナル・ファンタジー・シリーズ」もファンタジィだろう。カードゲームの『マジック・ザ・ギャザリング』なんかもファンタジィなのだろう。中国を舞台にした『西遊記』や『封神演義』だって、ファンタジィだ。ファンタジィって幅広いな、と思う。最近は息子のツクル氏と一緒に、毎晩、「オズ・シリーズ」を読んでいて、もう少しで14作品を読破できる。こういうのもファンタジィだろう。

そんなわけで、ファンタジィの源流を探るべく、最近になって、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』(1865年)を読み始めた。もっと遡れば、ジョン・ラスキンの『黄金の川の王様』(1851年)とか、チャールズ・キングズリーの『水の子』(1863年)などがあるらしいので、その辺も読んでみたいな、と思っている。ファンタジィはイギリスで誕生した。ちょうど、18世紀中頃に、書籍商のジョン・ニューベリー(1713~1767年)という人物が、子供向けに本を出版して売り出し始め、挿絵を付した本が売れるようになった時代らしい。その影響を受けて、18世紀後半には行商人たちによって「チャップブック」と呼ばれる通俗な本が販売され、その中で、フェアリーテール(おとぎ話)が人気を博すようになる。けれども、こういう通俗的な内容は、宗教的・道徳的・教育的に怪しからんということで、排斥する動きが出てくる。そんな中、1768年頃、ニューベリーがフランスで高い評価を得ていたシャルル・ペローの作品の英語版を出版する。そして、1823年にグリム兄弟の作品集の英訳、1840年代にはハンス・クリスチャン・アンデルセンの童話の英訳が始まって、自由な発想による空想文学が出来上がる素地ができた。そうして、前述のラスキン、キングズリー、キャロルが作品を発表していく。

この辺の流れをちゃんと押さえれば、改めて「ファンタジィ」とは何か、を定義できるのではないか。そんなことを密かに目論んでいる。また、ヨーロッパの人々が新大陸アメリカに移住したときには、アメリカの地には「彼ら」にとっての神話・伝承がなかった。そのため、アメリカ人にとっての新たな神話として執筆された「オズ・シリーズ」も、ボクの中では、ひとつの探求のターゲットになっている。

こうやって、少しずつ「ファンタジィ」の外堀を埋めながら「ファンタジィ事典」を編纂していければよい。40歳になって、そんなことを感じている。

2021年9月30日 ミャンマーの伝承をガガッと大量更新中!!

ここのところ、ボクは「ファンタジィ事典」の更新に余念がない。各方面、各分野で更新しているが、本日はミャンマーの伝承に注力してみた。ミャンマーを旅して、現地で『The Thirty-Seven Nats』という本もゲットして、ずぅっと更新したいと思っていた分野だ。「ドゥッタバウン群」に分類される7柱のナッ神を更新してみた。マハギリナマードゥシュエナベシンニョシンピュトウン・バーンラシンネミだ。ちょっと、頑張って更新してみたので、是非、眺めてみて欲しい。ドゥッタバウン群の詳細はミャンマーの伝承を要チェック!!

そのうち、アノーヤタ群をまたガガッとまとめて大量に更新する日がやって来る……はず!?