ローン
分 類 | イギリス伝承(スコットランド) |
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Roane(ローン)《アザラシ》【スコットランド語】 | |
容 姿 | 海中ではアザラシ。陸上ではアザラシの皮を脱いで人間と同じ姿。 |
特 徴 | アザラシの皮をまとって海中に集団で暮らす。 |
出 典 | - |
海中でアザラシの皮を纏う妖精!?
ローンはスコットランド伝承に登場する海に棲む妖精。roaneというのはスコットランド高地の言葉で《アザラシ》という意味である。スコットランドでは、そもそもアザラシは妖精と考えられていた。海の中にいるときにはアザラシの皮を着て泳いでいるが、陸に上がるときにはその皮を脱いで人間と同じような姿になる。なお、ローンというのはスコットランドの西北に位置するヘブリディーズ諸島に伝わるアザラシ妖精たちのことで、スコットランド北東に位置するオークニー諸島やシェットランド諸島にはセルキーという似たようなアザラシ妖精たちが棲んでいる。
アザラシの皮を隠して妖精と結婚する!?
ローンと人間の結婚譚として、日本の羽衣伝承のような話が知られている。ローンは海を泳ぐためにはアザラシの毛皮が必要になるが、あるとき、美しいローンの乙女を見つけた男性が、アザラシの皮を手に入れて、彼女を妻にするのである。しかし、どれだけ幸せな結婚生活を送っていても、ローンがアザラシの皮を発見してしまった場合、彼女はそれを纏って海の仲間たちの元へ戻ってしまう。なお、ノース・ユイスト島のマック・コドラム(MacCodrum)の一族はアザラシ族の子孫として知られている。ローンの乙女と人間の間に生まれた子供の末裔なのだという。
ローンはとても温厚な種族だとされる。たとえば、漁師たちがアザラシを傷つけたときにも、復讐しようとするのではなく、人間の姿になって、仲間を傷つけないように頼みに来るという。これがスコットランド北東のセルキーだった場合には、ひどい嵐を起こし、人間たちは海で命を落とすこともある。
《参考文献》
- 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
- 『シリーズ・ファンタジー百科 世界の妖精・妖怪事典』(著:キャロル・ローズ,監訳:松村一男,原書房,2003年〔1996年〕)
Last update: 2021/04/11