ケルピー
分 類 | イギリス伝承(スコットランド) |
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Kelpie(ケルピー)【スコットランド語】 | |
容 姿 | 灰色の馬に化けた妖精。 |
特 徴 | 湖などに棲み、人間を背中に乗せると水中に引き込んで貪り喰う。 |
その馬の背中に乗ったが最後!?
ケルピーはスコットランドの湖に棲む妖精である。灰色の小さな馬に化けて、水辺の草を食んで、人間が近くにやって来るのを待っている。人懐っこく寄ってくるからと言って、背中に乗ろうなどと考えてはいけない。一度背中に乗ってしまうと、もう、降りられなくなり、そのまま水中に引き込まれて、溺死させられてしまう。ケルピーはこうやって水中に引き込んだ人間を食べてしまう。だから、しばらくすると内臓だけが浮かび上がる。ケルピーは内蔵は食べないのだという。
ケルピーは魔法の馬具をつけていることがあり、これを外して奪ってしまえば、ケルピーを思いのままに操ることができると言われている。また、人間界の馬具をつけても手懐けることが出来るという。ただし、あまりに働かせ過ぎると呪われることもあるらしい。ある伝承では、グレアムという領主がケルピーに人間界の馬具をつけることに成功し、ケルピーに石を引かせて城を建てさせた。城が完成して馬具を解いてやると、ケルピーは「背中が痛い」などとぼやき、グレアム一族に呪いをかけたという。以後、一族は末代まで不幸が続いたという。
稀に人間の姿になるときもあって、そういうときには毛むくじゃらの男の姿になるという。そして、旅人に話しかけ、何とかして水中に引き込もうと画策してくるという。また、旅人が馬に乗って水辺を通り掛かろうものなら、後ろから飛び掛かって無理矢理水中に引き込もうとする乱暴なケルピーもいるようだ。
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スコットランドやアイルランドなど、イギリスにはケルピーに似た水棲馬の伝承がたくさんある。ケルピーは淡水に棲むが、同じスコットランドには、海水に棲む水棲馬のアハ・イシュケがいる。また、オークニー諸島にはナッグル、シェトランド諸島にはタンギ、マン島にはカーヴァル・ウシュタという水棲馬の伝承がある。ウェールズの伝承に登場する水棲馬はケフィル・ドゥールなどと呼ばれている。いずれにしても、背中に乗せて水中に引き込もうとするので用心が必要だ。
《参考文献》
- 『妖精事典』(編:キャサリン・ブリッグズ,訳:平野敬一/井村君江/三宅忠明/吉田新一,冨山房,1992年)
- 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
Last update: 2014/02/11