カグツチ

分 類日本神話
名 称 火之夜藝速男神(ヒノヤギハヤオノカミ)、火之炫毘古神(ヒノカガビコノカミ)、火之迦具土神(ヒノカグツチノカミ)〔記〕【日本語】
軻遇突智(カグツチ)、火産靈(ホムスビ)〔紀〕【日本語】
容 姿男神。
特 徴火の神。イザナキとイザナミの子。出産に際してイザナミを火傷させて殺した。火山や農業と関連づけられる。
出 典『古事記』(8世紀頃)、『日本書紀』(8世紀頃)ほか

イザナミが命を賭して産んだのは火の神でした!?

カグツチは日本神話における火の神。「神産み」の神話において、イザナキイザナミはさまざまな神々を産んだが、最後に産んだ神がカグツチである。カグツチは火の神であったため、彼が誕生したとき、イザナミは陰部を火傷し、これが原因で死んでしまう。これに激怒したイザナキは、十拳劒(とつかのつるぎ)でカグツチを殺した。

なお、カグツチによって火傷したイザナミは、苦しんで嘔吐し、脱糞し、失禁して、火や農業に関わる神々を生み出した。また、イザナキによって斬り殺されたカグツチの血が岩石に滴り、そこからもさまざまな農業に関わる神々が誕生している。さらにはカグツチの死体からもさまざまな火山の神々が誕生した。

イザナミが火傷の苦しみより生み出した神々!?

カグツチによって火傷したイザナミは苦しみ、嘔吐によって金山毘古神(カナヤマヒコ)と金山毘売神(カナヤマヒメ)という金属の神々を産んだ。また、脱糞によって、波邇夜須毘古神(ハニヤスヒコ)と波邇夜須毘売神(ハニヤスヒメ)という陶器の神々を産んだ。そして、失禁によって弥都波能売神(ミズハノメ)と和久産巣日神(ワクムスビ)という農業と食物の神を産んだ。

人間は火によって金属を制御し、精錬する。また、陶器を焼くためにも火は欠かせない。火と農業の関係は明確ではないが、カグツチは火の神でありながら、農業の神でもある。おそらく、火によって精錬技術を手に入れた人類が、農具を発達させて農業を促進させたからだと解釈できる。カグツチの血液から<誕生する神々が農業に関係しているのも、おそらくそのような連想によるものと解釈される。

カグツチの血液が大地に滴って生まれた神々!?

一方、カグツチの血が岩石に滴って生まれたのは、石拆神(イワクサ)、根拆神(ネサク)、石筒之男神(イワツツノオ)などの開墾をイメージする神々、甕速日神(ミカハヤヒ)、樋速日神(ヒノハヤヒ)などの土器をイメージする神々、そして、建御雷之男神(タケミカヅチノオ)は雷をイメージする神である。闇淤加美神(クラオカミノカミ)、闇御津羽神(クラミツハノカミ)は水の神々である。火の神から農業に関連した神々が次々と誕生するのは、すでに上述したとおり、火が精錬技術を生み出し、鍬や鎌など農具の改良によって農業が発展したからだと解釈できる。

カグツチの死体から生まれた神々!?

また殺されたカグツチの死体から、8人の火山の神が誕生した。正鹿山津見神(マサカヤマツミノカミ)、淤縢山津見神(オドヤマツミノカミ)、奧山津見神(オクヤマツミノカミ)、闇山津見神(クラヤマツミノカミ)、志藝津見神(シギヤマツミノカミ)、羽山津見神(ハヤマツミノカミ)、原山津見神(ハラヤマツミノカミ)、戸山津見神(トヤマツミノカミ)である。

《参考文献》

Last update: 2020/08/22

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