渾沌(ホゥンドゥン)

分 類中国伝承
名 称 渾沌(浑沌)〔húndùn〕(ホゥンドゥン)【中国語】
渾沌(こんとん)【日本語】
容 姿長い毛をはやしたイヌのような怪物。
特 徴訳が分からない。
出 典『神異経』、『荘子』ほか

天地開闢から生きる意味不明の怪物!?

渾沌(ホゥンドゥン)は中国伝承に登場する怪物。犬のような怪物で、長い毛がはえている。目はあるが見えず、耳はあるが聞こえず、熊に似た足はあるが、ぐるぐると自分の尾をくわえて回って前には進まない。空を見て笑っている。善人を嫌い、悪人に媚びるという。「渾沌」という名前が示す通り、訳が分からない怪物。天地開闢のときから生きていたという。饕餮、窮奇、檮杌とともに四凶に1匹に数えられる。

崑崙西有獸焉,其狀如犬,長毛四足, 似羆而無爪,有目而不見,行不開,有兩耳而不聞,有人知往,有腹無五臟,有腸,直而不旋,食物徑過,人有德行則往牴觸之,有凶德則往依憑之,天使其然,名為渾沌。《春秋》云:“渾沌帝鴻氏不才子也,空居無為,當 咋其尾回轉,仰天而笑”。

崑崙の西に獣がいる。その姿はイヌのようで、長い毛で四本足で、ヒグマに似ているが、爪はない。目はあるが見えず、進むときには足は開かない。両耳はあるが、聞こえない。人の行くところは知っている。お腹はあるが、内臓はない。腸はあるが、真っすぐでねじれていない。そのため、食べ物は素通りする。徳のある人物がいるとぶつかってきて、徳がない人物があるいていると付き従う。そのため、天の使いが与えた名前は渾沌である。『春秋』では「渾沌は帝鴻氏の不出来な子で、何もせず、常にその尻尾を噛んで回転し、天を仰いで笑う」とある。

『神異經』「西荒經」より

『荘子』では、渾沌は目、耳、鼻、口の7つの穴がない存在としても描かれる。儵と忽は、渾沌に歓待された御礼に通常、人間がみんな持っている7つの穴を与えようと、1日1つずつ穴を開けていったところ、7日目に全部の穴を開けた瞬間に渾沌は死んでしまったという。いずれにしても、よく訳の分からない怪物である。

南海之帝為儵,北海之帝為忽,中央之帝為渾沌。儵與忽時相與遇于渾沌之地,渾沌待之甚善。儵與忽謀報渾沌之德,曰:“人皆有七竅以視聽食息,此獨無有,嘗試鑿之。”日鑿一竅,七日而渾沌死。

南の海の支配者は儵(しゅく)、北の海の支配者は忽(こつ)、中央の支配者は渾沌で、儵と忽は一緒に渾沌に会いに行き、渾沌は非常によく持て成した。儵と忽はそれに報いるために「人にはみんな、7つの穴があって、それらで見て、聞いて、食べて、そして息をしている。渾沌には1つもないので、穴をあけてあげよう」と言って、1日に1つずつ穴を開け、7日目に渾沌は死んだ。

『莊子』「應帝王篇」より

《参考文献》

Last update: 2020/09/03

サイト内検索