がしゃどくろ
分 類 | 日本伝承 |
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がしゃどくろ【日本語】 餓者髑髏(がしゃどくろ)【日本語】 | |
容 姿 | 10メートルほどの巨大な骸骨の妖怪。 |
特 徴 | 野垂れ死んだ人々の骸骨が何百体も集まってできた。人を襲い、喰らう。 |
出 典 | 佐藤有文『日本妖怪図鑑』(1972年)ほか |
死んだ人々の骨が合体!?
ガシャドクロは巨大な骸骨の妖怪である。10メートルもある骸骨で、夜中に黄色く光る目玉をぎらつかせ、歩くたびにガシャガシャと音を立てる。武士たちが立ち向かったが、あっという間に巨大な骨の手で握り潰されて食べられてしまったという。野垂れ死んだ人々の骸骨が何百体も集まってできたと説明されている。「餓者髑髏」と表記されることもあるが、元々は「ガシャガシャ」という音に由来するものと思われる。
昭和の妖怪本で誕生!?
ガシャドクロは比較的、新しい妖怪で、昭和になって妖怪本が出版される中で生まれたものだ。佐藤有文や水木しげるなどの昭和中期の妖怪本で紹介されて有名になった。その初出は1966年の別冊少女フレンドでの斎藤守弘氏の妖怪記事である。「がしゃどくろ あるくたびにガチガチと音をたて、目玉だけがとびでた巨大ながいこつ。それががしゃどくろだ。このばけものは、野原でのたれ死にした人のどくろがあつまったもので、人を見るとおそいかかってくる」と説明されているが、その出典は不明である。
その後、1968年に水木しげるがこの斎藤守弘氏の妖怪記事を参考にマガジンの妖怪紹介コーナーでガシャドクロを描いた。このときに水木しげるがガシャドクロの絵の元ネタにしたのが歌川国芳の浮世絵『相馬の古内裏』(1845-1846年頃)である。また、佐藤有文の『日本妖怪図鑑』(1972年)で、解説とともにそのまま浮世絵『相馬の古内裏』を添えた。この浮世絵は滝夜叉姫が呼び出した数十メートルもある巨大な骸骨が大宅太郎光国らの前に出現して驚かせている様子が描かれているもので、江戸の当時はオランダから解剖学などの概念が伝わってきていたため、歌川国芳はかなり精緻な骸骨が描いていて、迫力がある。
ただし、当然ながら、この歌川国芳は巨大な骸骨を「がしゃどくろ」として描いたわけではない。この浮世絵のモティーフになっているのは、山東京伝の読本『善知安方忠義伝』(1806年)で、本来は、平将門の娘である滝夜叉姫が、父将門が承平天慶の乱で朝敵として討伐され、一族郎党が滅ぼされる中、生き残って一族再興を画策し、妖術を得て、数百体の骸骨を呼び出して大宅太郎光国に怖がらせているシーンを描いたものである。歌川国芳はこの数百体の骸骨を描く代わりに1体の巨大な骸骨として描いた。おそらく、この浮世絵から着想を得て、昭和の妖怪本の中で、たくさんの骸骨が合体した妖怪として、「ガシャドクロ」が説明されるようになった。
従って、元々の浮世絵「相馬の古内裏」に登場する妖怪は「がしゃどくろ」とは呼ばれていないし、当時の作品に、骸骨が合体する妖怪という物語が伝わっているわけではない。
《参考文献》
- 『水木しげるの妖怪 百鬼夜行展 ~お化けたちはこうして生まれた~』(2022年)
- 『日本妖怪大事典』(編著:村上健司,画:水木しげる,角川文庫,2015年〔2005年〕)
- 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
- 『日本妖怪図鑑』(著:佐藤有文,復刊ドットコム,2016年〔1972年〕)
- 『山東京傳全集 第十六巻』(著:山東京伝,ぺりかん社,1997年)
- 『世界怪奇スリラー全集 2 世界のモンスター』(著:山内重昭,秋田書店,1968年)
Last update: 2022/10/01