二口女(ふたくちおんな)

分 類日本伝承
名 称 二口女(ふたくちおんな)【日本語】
食わず女房(くわずにょうぼう)【日本語】
容 姿後頭部に口のようなものがついている。
特 徴普段は人間の女性だが、頭の後ろに口がついていて、そこで食事を摂る。
出 典桃山人『絵本百物語』(1841年)ほか

食わず女房はよく食べる!?

二口女(ふたくちおんな)は日本の妖怪。後頭部に大きな口がついた女性の姿をした妖怪である。日本各地で「食わず女房」とか「飯食わぬ嫁」などの昔話で知られる。ケチな男が「嫁を貰うと食い扶持が増える」などと結婚しないでいると、飯を食わずによく働く女性が現れて妻にする。しかし、不思議なことに家の米などの食糧の減りが激しくなり、不審に思った男が「内緒でこっそりと食べているのではないか」と怪しがって出掛ける振りをして屋根裏などからこっそりと妻の様子を覗き見る。すると、女性は大量の米を炊いている。そして、後頭部に大きな口が現れ、次々に握り飯を食べていた。その正体は山姥であったり、タヌキやカエル、クモが化けたものだったりする。

連れ子を殺してしまった女性のなれの果て!?

怪談集で画集の『絵本百物語』(1841年)では、人面瘡のような怪異として語られている。それによれば、下総国(現在の千葉県)で、ある家に嫁いだ後妻が、先妻の娘にろくな食事を与えずに餓死させてしまった。それから49日が経ち、夫が薪を割っていたときに誤って振り上げた斧が後妻の後頭部に当たった。その傷口は人間の唇のように、頭蓋骨が歯のように、そして肉の一部が舌のようになったという。次第に傷口が痛み出し、後頭部の口から食べ物を入れれば痛みが和らいだという。また、この口は話すこともあるようで、「心得違いから先妻の子を殺してしまった。間違いだった」などと喋ることもあったという。

頭われて血おびたゞしく出しが、疵口さらに愈ることなく、唇のかたちをなして、骨は出て歯の如くになり、肉つき上りて舌に類せり。

(『絵本百物語』「第十七 二口女」より)

ちなみに、竹原春泉斎はこの話に挿絵をつけているが、長い髪が食べ物を次々と掴んでは後頭部の口に運ぶ様子が描かれている。

竹原春泉斎の「二口女」の画

まゝ子をにくみて食物をあたえずして殺しければ、継母の子産れしより首筋の上にも口ありて、食をくはんといふを髪のはし蛇となりて食物をあたへ、また何日もあたへずなどしてくるしめけるとなん。おそれつゝしむべきはまゝ母のそねみなり。

(『絵本百物語』「第十七 二口女」より)

《参考文献》

Last update: 2024/09/17

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