人面瘡(じんめんそう)
分 類 | 日本伝承 |
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人面瘡(じんめんそう)【日本語】 人面疽(じんめんそ)【日本語】 | |
容 姿 | 傷口が化膿して人の顔のようになる。 |
特 徴 | 顔のような傷口が話したり、物を食べたりする。 |
出 典 | 浅井了意『伽婢子(おとぎぼうこ)』(1666年)ほか |
傷口が化膿して人の顔になる!?
人面瘡(じんめんそう)、あるいは人面疽(じんめんそ)は傷口が化膿して、次第に人の顔のような形になって、その顔が話をしたり、食事を食べたりする怪異、妖怪、あるいは病気。一説では、貝母(ばいも)と呼ばれるアミガサユリの鱗茎(球根の一種)を乾燥させた漢方薬が有効だと信じられた。
古くは唐の時代の随筆の『酉陽雑俎』(著:段成式、860年頃)に記述があり、左腕に人の顔のような瘡ができたという。酒を与えると酔っ払い、食べ物を与えるとそれを食べ、逆に食べ物を与えないと腕が痺れたという。いろいろな薬を試した結果、貝母を与えると人面瘡が眉を寄せたので、これは有効だと無理矢理に貝母を流し込んだところ、数日でカサブタになって治癒したとされる。
江戸時代の奇談集の『伽婢子(おとぎぼうこ)』(著:浅井了意、1666年)でも、山城国(現在の京都)において左足に腫物ができ、やがて人面瘡になったという話が載っている。これも『酉陽雑俎』と同様に酒を飲ませると酔い、食べ物を与えると痛みが和らぐが、食べ物を与えないと激しい痛みに襲われたという。貝母を無理やり流し込んだところ、1週間程度で治癒したとされる。
人面瘡は誰かの強い恨みが傷口に宿って生じると説明されることが多い。たとえば、誰かを殺した人物の身体に、殺された側の人間の顔をした人面瘡が生じた話などがよく知られる。また、通常は人面瘡はとり憑いた人間そのものに害をなすが、曲亭馬琴の小説『新累解脱物語』では、女性の膝に生じた人面瘡が毒を吐き出し、周囲の人にも影響を及ぼすという珍しい事例もある
《参考文献》
- 『日本妖怪大事典』(編著:村上健司,画:水木しげる,角川文庫,2015年〔2005年〕)
Last update: 2024/09/17