ブギスギス

分 類フィリピン伝承
名 称 Bungisngis(ブギスギス)【フィリピン諸語】
容 姿一つ目の巨人。
特 徴水牛を投げ飛ばすほどの怪力。
出 典

ブギスギスのイラスト

フィリピンの一つ目巨人!?

ブギスギスはフィリピン・ルソン島に伝わる森の一つ目巨人である。その姿はフィリピン版のキュクロープスといった感じで、身長は約3メートルほど。ギス(ngis)というのはタガログ語で《ニヤリと笑う》という意味らしく、その名前が示すとおり、いつも陽気にニヤニヤ笑っている。ブギスギスは水牛を圧倒するほどの怪力を誇る。そのため、しばしば絵などでは、水牛(カラバオ)を背負った姿で描かれることが多い。

物語「サルとイヌとカラバオ」に登場するブギスギス

バタンガス地方に伝わる「サルとイヌ、カラバオ」という物語にはブギスギスが登場する。あるとき、サルとイヌとカラバオ(水牛)は食事会を開いた。最初は水牛が料理人として食事の準備をしていると、その匂いに誘われてブギスギスがやってきた。そして「これは俺のための食事だな」などと言って勝手に食べようとするので水牛が抵抗した。しかし、ブギスギスは水牛の角を掴むと軽々と地面に叩きつけて昏倒させ、準備していた食事を全て平らげてしまった。翌日、今度はイヌが料理人となったが、同様にブギスギスがやってきてイヌを投げ飛ばして食事を全て食べてしまった。3日目はサルが料理人となった。サルは事前に落とし穴を掘っておいて、そこに椅子を置いた。食事の匂いに誘われてブギスギスがやってきたので、サルは抵抗することなく、食事をもてなした。椅子に座ったブギスギスはまんまと落とし穴に墜落し、サルはブギスギスを土で埋めてしまった。

後からやってきて経緯を知った仲間たちは、確認しようと土を掘り起こした。ブギスギスはまだ生きていて、イヌを倒し、水牛を穴に引きずり落とした。サルは何とか木の上に逃れたが、ブギスギスは怒り心頭、追いかけてきた。逃げるサルは、大蛇(ボアコンストリクター)を見つけたので、この大蛇をきれいなベルトだと勘違いさせてブギスギスの腰に巻き付けさせた。すると、大蛇はギュウギュウとブギスギスを締め付け、ブギスギスは退治されてしまった。

このように、ブギスギスは怪力を誇るが、登場人物たちの知恵によって退治される間抜けな側面がある。

ブギスギスの正体は大昔のゾウの頭蓋骨か!?

ちなみに、ギリシア・ローマ神話の一眼巨人のキュクロープスは、ゾウの頭蓋骨を見た古代人が一眼巨人を想像したのではないかと言われているが(ゾウの頭蓋骨は真ん中に大きな鼻腔がひとつ開いていて一眼のように見える)、フィリピンにも昔はゾウが棲んでいたため、発掘された頭蓋骨から着想を得たのではないかという説もある。

《参考文献》

Last update: 2024/01/13

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