バロメッツ

分 類古代・中世博物誌ヨーロッパ伝承
名 称 Planta Tartarica Barometz(プランタ・タルタリカ・バロメッツ)《タタールの植物バロメッツ》【ラテン語】
容 姿ヒツジの実がなる植物。実からヒツジが顔を出しているか、茎の先がヒツジのヘソと繋がって描かれることが多い。
特 徴衣服の原料となる。また、実はカニのような味がする。
出 典オデリコ『東方紀行』(1314年頃)、ジョン・マンデヴィル『東方旅行記』(14世紀)ほか

ヒツジの実がなる伝説の植物!?

バロメッツは古代・中世ヨーロッパで信じられたヒツジの実をつける植物である。スキタイの羊とかタタールの羊などとも呼ばれているが、スキタイ地方(黒海沿岸)やインドなどの荒野に棲息する伝説の植物である。この植物はヒツジが入った実がなる。時期が来るとメロンのような実をつけ、実が熟して割れると、生きたヒツジが顔を出して「メー」と鳴く。この植物の茎は先がヒツジのヘソの部分と繋がっている。ヒツジは周囲の草を食んで成長するが、茎の長さを半径として、それより外側の草は食めない。結果、周囲の草を食べきってしまうと、やがてヒツジの実は飢えて死んでしまうという。そうして死んだヒツジの実を求めてオオカミたちが集まってくるという。この果実を食べるとカニのような味がするとも伝えられている。

ヒツジの実がなる植物の正体は綿花!?

「ヒツジの実がなる植物」に関しては、すでに古代ギリシアのクテーシアスの『インディカ(インド誌)』(前5世紀)で言及されている。インドには羊毛のなる木があり、現地ではこの毛で衣服をつくると説明されている。おそらく、これは綿花と木綿を説明したものだったはずだが、綿花を知らないさまざまな著述家が「ヒツジの実がなる植物」について言及する中で、次第に伝説の植物として広まっていった。

たとえば、メロンやヒョウタンのような実がなり、実を切ると中にヒツジが入っているとか、生きたヒツジそのものが茎から生えているとか、実ると実が割れて中からヒツジが出てきて「メー」と鳴くとか、ヘソに繋がっている茎とヒツジを切り離すとヒツジは死んでしまうとか、ヒツジの実を切ると赤い血が出るなどの描写がある。また、ヒツジの実は蹄の部分まで柔らかい羊毛なので捨てる部分がないとも信じられた。

《参考文献》

Last update: 2023/09/23

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