ウィル・オ・ザ・ウィスプ

分 類イギリス伝承
名 称 Will-o'-the-Wisp(ウィル・オ・ザ・ウィスプ)《わら束を持ったウィリアム》【英語】
Ignis Fatuus(イグニス・ファトゥス)《愚者の火》【ラテン語】
容 姿青白い炎。
特 徴夜道で人を迷わす。

森の中で人を迷わす青白い炎!?

ウィル・オ・ザ・ウィスプはイギリス各地に伝わる鬼火伝承のひとつ。特にイングランドではこの名称で呼ばれることが多い。青白い炎で、森の中などで旅人がふわふわ揺れる炎を人間の灯りと勘違いして後をついていくと、道に迷わされたり、沼地にはまり込んだりする。幽霊などが現れる前に前触れとして出現することもある。ラテン語で「イグニス・ファトゥス」とも呼ばれる。沼地などに出没することが多く、科学的にはリン化合物やメタンガスなどが引火して発火する現象だと説明される。あるいは、近年の学者がよく引き合いに出すのは球電説だ。球電というのは稲妻の一種で、稲妻の先から時折、電気の塊が飛び出す。これが球電で、ふわふわと空中を漂って、発火物に触れると突然、大爆発を引き起こす。西洋では火の玉に屋根を吹っ飛ばされたとか、人間が焼き殺されたという怖ろしい事例があるので、目撃された鬼火の中には球電もあったのかもしれない。

伝承ではふらふらと飛び回り、沼地へ誘い込むだけのウィル・オ・ザ・ウィスプだが、近年のファンタジーゲームなどでは、球電説を採用しているのか、下手に攻撃すると電撃で反撃して、大火傷することもある。また、稀に光の精霊という扱いで登場して、パーティたちの手助けをすることもあるようだ。

ラテン語の文献で「ignis fatuus」の用例は見つからないので、後世におけるラテン語での造語である。

ウィル・オ・ザ・ウィスプの誕生譚

その昔、極悪人のウィリアムが死んだとき、天国の鍵を持つ聖ペテロに地獄行きを言い渡されそうになったところを口先八丁で騙して再び現世に蘇ったという。ところがウィリアムは第二の人生でも悪行三昧。二回目に死んだときには天国にも地獄にも行くことができなくなった。それを見て同情した悪魔が地獄の業火から一掴みをとってウィリアムに与えたという。こうして、ウィリアムは青白い光を灯して、現世を彷徨い続ける運命になったのだという。

ちなみに、アイルランドやウェールズのジャック・オ・ランタンにも類似の誕生譚が知られている。

《参考文献》

Last update: 2024/01/01

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