ピー・ターイタンクロム

分 類タイ伝承
名 称 ผีตายทั้งกลมP̄hī tāy thậng klm〕(ピー・ターイ・タン・クロムイ)【タイ語】
容 姿赤子を抱いた女性の姿。
特 徴胎児を身ごもったまま死んだ女性の霊。
出 典

身ごもったまま死ぬと悪霊に!?

ピー・ターイタンクロムはタイで信じられている幽霊の一種。タイでは、胎児を身ごもったまま亡くなったり、出産の際に赤子と一緒に死んだりすると、死後、悪霊になると信じられた。そのため、寺院に運ばれると、手厚く葬られた。

ピー・ターイタンクロムは、赤ん坊を抱いた姿で墓場から出現する。生前のままの姿で描かれることもあれば、死体のような姿で描かれることもある。手が長く伸びるという特徴を持つとされ、村の赤ん坊のために子守唄を歌ったり、長い手で揺りかごを揺すったりする。

ナーク夫人、ピー・ターイタンクロムと化す!?

最も有名なピー・ターイタンクロムはメーナークで、民話『メーナーク・プラカノーン』に登場する。メーナークというのは《ナーク夫人》という意味である。あるとき、プラカノーン村のナークは、マークと結婚し、やがて妊娠する。しかし、マークは兵役で戦地に赴くことになった。マークは身ごもったナークを親戚たちに託すと村を離れた。不幸にも、ナークの赤子は逆子で、彼女は出産の際に命を落としてしまう。親戚は彼女がピー・ターイタンクロムになることを恐れ、寺院に手厚く葬った。しかし、呪術師が呪術に使う目的で、彼女の遺体を掘り起こしてしまう。以降、赤子を抱いたナークの亡霊が出没するようになった。

戦場からマークが戻ってくると、ナークは彼の前に子供とともに現れ、3人で暮らすようになった。村人たちは何度もマークに「彼女は死んだ。それはピー・ターイタンクロムだ」と説明しても、マークは信じず、ナークと子供と3人は幸せに暮らし続けた。しかし、あるとき、ナークが料理しているときに、台所からライムが転がって庭先に落ちた。彼女は腕をするすると2メートル以上も伸ばしてそれを拾い上げた。これを見たマークは、ようやく彼女がピー・ターイタンクロムであることを理解した。

マークは寺院に駆け込み、彼女を成仏させるように僧侶たちに依頼した。すると、夫を奪われたと激怒したナークは正体を現し、邪魔する近隣住民たちを次々に殺していった。僧侶たちは悪魔祓いするが、彼女は恐ろしく、なかなかうまく行かない。近隣の寺院から高名な住職が呼ばれ、ようやく彼女を説得して成仏させたという。

《参考文献》

Last update: 2024/04/06

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