野宿火(ノジュクビ)

分 類日本伝承
名 称 野宿火(ノジュクビ)【日本語】
容 姿火。
特 徴誰もいなくなった後に火が燃えたり消えたりを繰り返し、人の声だけが聞こえる。
出 典桃山人『絵本百物語』(1841年)ほか

人が立ち去っていなくなると、火だけが出現して燃え上がる!?

野宿火(のじゅくび)は『絵本百物語』で紹介される怪火。竹原春泉の挿絵ではただの焚き火のような絵が載っている。田舎道、街道、山の中など、どこにでも出没するようで、人がいなくなった後で、誰もいないのに燃えては消え、消えては燃えを繰り返す。人が騒いだり歌ったりする声だけが聞こえてくる。

田舎道は更にて、街道山中抔いづこにもあり。誰が焚捨たるとはなしに、人なき跡にほとほとと然上りては消、きえては又もゆ。したじ焚しめたるほむらの消ては然るを野宿火と云。乞食の暁起出てたる跡、遊山に人の去りたる後、何れもものすごし。雨の後抔に然立たるを木の間がくれにみれば、人のつどひてものいふさまなどにことならず。哀に物すごくしてすさまじきものは野宿火也。

竹原春泉の描いた「野宿火」

きつね火にもあらず、草原火にてもなく、春は桜がり、秋は紅葉がりせしあとに火もえあがり、人のおほくさわぎ、うた唱ふ声のみするは野宿の火といふものならん。

(『絵本百物語』巻第壱第七「野宿火」より)

乞食が朝早くに起き出した跡や、野山に遊びに出掛けた人が帰った後、お花見や紅葉狩りなどのイベントの後などに出現するので、もしかしたら、そこにしばらくいた人の気持ちがその場に残って、このような火となって現れるのかもしれない。

《参考文献》

Last update: 2021/04/11

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