メン・シーフーハーター

分 類タイ伝承
名 称 แมงสี่หูห้าตาmeang sihuhata〕(メン・シーフーハーター)《四耳五目虫》【タイ語】
สี่หูห้าตาsihuhata〕(シーフーハーター)《四耳五目》【タイ語】
พญาวานรสี่หูห้าตา(パヤーワーノーン・シーフーハーター)《四耳五目猿》【タイ語】
容 姿四つの耳、五つの目を持った四足獣。
特 徴燃えた炭を食べて黄金の糞を排泄する。
出 典

メン・シーフーハーターのイラスト

シーフーハーターに祈って金運アップ!?

メン・シーフーハーターはタイ北部のチエンラーイ県に伝わる聖獣の一種で、耳は4つ、目は5つのクマのような四足獣である。目は緑色で、全身には黒い長い毛に覆われている。シーフーハーターという名前そのものも、タイ語で《四耳五目》という意味である。メン・シーフーハーターとも呼ばれていて、メンは《虫》とか《蜘蛛》を意味し、《四耳五目虫》という意味になるが、シーフーハーターが虫のように描かれることはない。チェンライ県のワットプラタートドイカオクワーイゲーオという寺院が伝承の発祥の地だとされる。焼けた炭を食べて、黄金を排泄する点が特徴で、金運アップの縁起物としてタイの各所の寺院にシーフーハーターが祀られている。シーフーハーターには焼けた炭が奉げられているが、像の後ろには金色の糞が添えられていることが多い(黄金の「巻きグソ」をあしらった寺院も!)。ラムプーン県ではサルのような二足歩行の姿で表現され、《四耳五目猿》として、パヤーワーノーン・シーフーハーターと呼ばれる。近年ではいろいろなイベントのマスコットキャラクターにもなっている。

聖なる獣シーフーハーターの伝承

チエンラーイ県の寺院・ワットプラタートドイカオクワーイゲーオの伝承では、ある貧しい生まれの男が父親の介護をしながらも苦しい生活を送っていた。彼の名前はアーイ・トゥッカッタ。彼が17歳のとき、遂に父親が亡くなった。彼は父を埋葬するために父親を背負って山を訪れた。そして、父親の首が落ちたところに父を埋め、そこに罠を仕掛けた。当時はそういう風習があったらしい。すると、そこに4つ耳、5つ目の不思議な獣が出現して、彼の罠に掛かった。彼はこの獣を家に連れて帰ると、父親の代わりだと思って丁寧に世話をし、いろいろな食べ物を与えてみたが、この獣は何も食べなかった。どうしたらいいのかと途方に暮れて数日が経ち、ある寒い冬にトゥッカッタが火を起こすと、偶然、木炭が弾けてこの獣のそばに飛んだ。獣は燃える木炭をおいしそうに食べた。これを知ったトゥッカッタは、せっせと火を熾しては獣に炭を与えてやった。やがて、シーフーハーターは排泄をしたが、獣の糞は本物の黄金だった。驚いたトゥッカッタは、家の床下に穴を掘って黄金を埋めた。

当時、王国には大変美しい娘がいたが、あるとき、国王は全国から娘の婿を募った。多くの有力者たちが立候補したが、王が彼らに出した条件は、自分の家から王宮まで黄金の雨水側溝をつくることだった。誰もが断念する中で、トゥッカッタは自分ならこの条件をクリアーできるかもしれないと思い、技術者を雇って地下に埋めた黄金で側溝をつくった。国王が王宮に伸びる黄金の側溝を辿ってトゥカッタの家までやってきた。こうして、トゥッカッタは見事、王国の王子となった。

国王に「このような黄金をどこから手に入れたのか」と問われ、トゥッカッタはシーフーハーターを見せた。国王は彼の床下を掘り起こすと、大量の金が埋まっていて、全ての金を掘り起こすのに7日掛かったという。国王はシーフーハーターを王宮に連れて帰ろうとしたが、シーフーハーターは逃げ出した。国王は獣を追って山奥の洞窟に入ったが、突如、がけ崩れが発生して、王は洞窟に閉じ込められた。王は自分の欲深さを後悔すると、シーフーハーターは王を解放したという。

こうして、国王はその後、ワットプラダートドイカオクワーイゲーオという寺院を建立し、シーフーハーターを祀ったのだという。

四耳五目の由来は!?

シーフーハーターの4つの耳は仏教の「四無量心」(慈無量心、悲無量心、喜無量心、捨無量心)を、5つの目は仏教の「五戒」(不殺生戒、不偸盗戒、不邪淫戒、不妄語戒、不飲酒戒)を表していると説明される。すなわち、相手の幸福を望み、相手の苦しみを取り除き、相手の幸せを喜び、そして相手に対して落ち着いていることと、殺さず、盗まず、不必要に性行為をせず、嘘を吐かず、酒を飲まないことを表現しているようだ。

《参考文献》

Last update: 2024/03/23

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