ライカンスロープ

分 類ヨーロッパ伝承
名 称 Lycanthrope(ライカンスロープ)【英語】
 Λυκάνθρωπος(リュカントローポス)【古代ギリシア語】
 ※ λύκος(リュコス)《オオカミ》+ἄνθρωπος(アントローポス)《人間》
Werewolf(ワーウルフ)【英語】
 ※ were(ヴェア)《人間》+wolf(ヴォルフ)《オオカミ》【古ゲルマン語】
Loup-garou(ルー・ガルー)【フランス語】
容 姿昼間は普通の人間の姿で、夜はオオカミに変身する。
特 徴昼間は人間として村人とともに生活して、夜になるとオオカミに変身して家畜や人間を襲う。

満月の夜にオオカミに変身!?

ライカンスロープは、いわゆるオオカミ人間のこと。日本語では「人狼」と訳されることもある。満月の夜などに人間がオオカミに変身するという伝承は有名だが、これはもともと東欧や北欧などのヨーロッパの森林地帯の伝承に由来する。

昼間は人間の姿をして、村人に紛れて一緒に暮らしているが、夜になるとオオカミに姿を変え、人間や家畜を襲う。先天的に人狼として生まれる場合もあれば、後天的に人狼になってしまう場合もある。ライカンスロープに襲われた人間が、同様にライカンスロープになってしまうという伝承もある。

狩猟民族、オオカミになって狩猟する!?

ヘーロドトスは『歴史』(前430年頃)の中で、黒海の北側(現在のポーランドやベラルーシなど)に住むネウロイ人たちが、1年に一度、オオカミに変身するという伝承を記述しているので、人狼の伝承は、かなり古い時代から信じられていたことが分かる。

古来より、シャーマニズム信仰の中では、獣の皮などを身に着けて、その獣になり切ることで、獣の能力を発揮する魔術があった。獣の皮をまとって獣そっくりの化粧をし、シャーマンの調合した薬を飲んで、音楽や太鼓に合わせ、シャーマンの呪術や祈祷で催眠状態になって、自己暗示をかけて、身も心もその獣になり切ることで、その獣の能力を得ようというわけだ。もしかしたら、ネウロイ人たちも、そのようなオオカミに関係する祭儀があったのかもしれない。

大昔には、オオカミはある種の崇拝の対象だった。アメリカ先住民の中には、オオカミを自らの祖先(トーテム)としている一族がいたし、モンゴルのチンギス・カンも、蒼き狼(ボルテ・チノ)の子孫とされた。日本でも、三峰神社などはオオカミを祀っている。大昔の狩猟民族たちは、オオカミの狩猟能力に対して畏敬の念を抱いていたのだろう。けれども、牧畜が始まると、一転、オオカミは害獣になってしまう。『7匹の子やぎ』や『3匹の子ぶた』でも分かるように、オオカミは家畜を襲う獣になってしまうのである。この過程で、オオオカミに変身する人間は「怪物」になってしまうのである。それが、人狼伝承の正体なのかもしれない。

ドールの人狼、ジル・ガルニエ!?

16世紀頃のキリスト教において、人狼は「魔女狩り」と結び付けられる。異端のレッテルを貼られたたくさんの人が、人狼だとされて迫害され、火炙りの刑にされている。1573年、フランスのドールの町で、ジル・ガルニエ(Gilles Garnier)はたくさんの子供を殺して食べた罪で裁判にかけられ、火炙りの刑になっている。当時の記録によれば、ジル・ガルニエは森の中で精霊に魔法の軟膏をもらい、狼男になって子供を襲い、その肉を喰らったことを告白したという。

一体、誰が人狼なのか!?

さて、獣人伝承の恐ろしいところは、獣人被害が出た後に、村人たちは、誰が獣人なのか分からない中で、疑心暗鬼になって暮らさなければならないという点である。まさに人狼ゲームそのものである。夜になると次々と被害者が出る。村人たちは総出で人狼退治に乗り出し、オオカミに大きな怪我を負わせることには成功するが取り逃がしてしまう。次の日の朝、オオカミが傷を負った場所と同じところに怪我している村人がいて、その正体が露見するというのがお決まりのパターンである。

16世紀以降、満月と結びつけられたり、銀の銃弾でなければ殺すことができないなどのさまざまな要素が盛り込まれた。

オオカミだけじゃない!? さまざまな獣人伝承!?

ライカンスロープという言葉は、古代ギリシア語《オオカミ人間》を意味する「リュカントローポス」に由来する。しかし、最近のファンタジー小説やゲームでは獣憑き全般のことをライカンスロープと表現していることもあるようで、オオカミに限定されないで用いられることも多い。あるいは、ワーウルフ(発音的にはウェアウルフの方が近い)という表現から、ワーラット(ネズミ人間)、ワーキャット(ネコ人間)、ワータイガー(トラ人間)など、様々な獣人が誕生している。

類似の存在として、南米のロビスオーメンやフィリピンのマラカットなどがいる。なお、アジアの吸血鬼の類い(タイのピー・グラスーやフィリピンのアスワンなど)は昼間は人間の姿で村人に混じって暮らし、夜になると怪物の姿に変身して人間を襲うため、広い意味ではライカンスロープの一種と言える。

《参考文献》

Last update: 2020/10/10

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