キリム

分 類アフリカ伝承
名 称 Kirimu(キリム)
容 姿7つの頭、7つの角、7つの目、黒い肌、イヌの牙、ワシの尾を持つ怪物。
特 徴森の奥深くに棲む。英雄ムウィンドに退治される。
出 典『ムウィンド叙事詩』ほか

英雄ムウィンドの怪物キリム退治!?

キリムはニャンガ族(コンゴ民主共和国の東部)に伝わる7つの頭、7つの角、7つの目を持つ森の怪物。イヌのような牙とワシのような尻尾を持つ。ニャンガ族の間に語られていた『ムウィンド叙事詩』では、森を守護する存在として描かれている。

『ムウィンド叙事詩』はトゥボンド村の英雄ムウィンドが雷神ンクバの加護を受けながら、さまざまな試練を乗り越えて父王シェムウィンドを倒して王となる物語だ。王になったムウィンドは、森に棲むイノシシの肉が食べたくなり、森に家来たちを差し向ける。家来は森でイノシシを獲ったが、その森の奧深くにはキリムが棲んでいた。人間の侵入に怒ったキリムは、3人の家来を丸呑みにした。何とか1人だけが村に逃げ帰り、ムウィンドに報告した。ムウィンドはキリムを退治するために森の中に入る。そして、王笏でキリムを打ち殺し、その死体を村に持ち帰った。キリムの腹を裂くと、3人の家来たちが生きたまま飛び出してきた。ムウィンドは「キリムの肉を残すところなく全て食べろ」と村人に命じる。村人がキリムの目を焼くと、そこから次々と人間が誕生し、その数は1,000人に達した。ムウィンドはこの新しい人々を「私の民だ」と言って彼らに新たな土地を与えた。しかし、天界の雷神ンクバは、村人がキリムの肉を焼く匂いに気づき、ムウィンドを連れ去ると「邪な行ないだ」としてムウィンドにさまざまな罰を与える。そして「今後、森や村の動物を殺してはならない」と命じ、この禁が破られたときにムウィンドは死ぬと警告する。

英雄ムウィンドのキリム退治は、人類が森を切り開いて社会を大きくしていくことと、それに対する戒めの物語なのかもしれない。

《参考文献》

Last update: 2020/05/06

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