ウェブサイトの多言語化
外国語をカタカナ化する限界
ウェブサイト「ファンタジィ事典」は「世界の妖怪」についてまとめた『事典』である。『事典』である以上、便宜上、全ての「世界の妖怪」をカタカナ表記に変換して、五十音順に並べる必要がある。しかしながら、外国語をカタカナ化するのは、一筋縄ではいかない。
例えば、英語で考えてみたときに、リンゴの『apple』は「アップル」とすべきか「アポー」とすべきか議論が分かれるところだろう。『good night』を「グッドナイト」とするか「グンナイ」とするかも同様で、当然、そこには揺らぎが生じる。一般に膾炙している方を採用すればよいが、一般に知られていない妖怪になれば、それも難しくなる。
基本的には、その国の言語の本を参考にしながら、一般に流布している表記と専門家や言語学者が採用する表記との間から選ぶことになる。でも、専門家の間でも、人によって表記が異なる場合もあるし、そもそも日本語にはない音を含む諸外国の言語をカタカナで表記する行為には限界がある。加えて、古代エジプト語や古代ヘブライ語などは「再建音」と言って、失われた発音を、後から類推して再構築している。だから、本来の発音が分からないことだってあるのだ。
地域によって呼称が異なることもある。例えば、大航海時代の冒険家「マゼラン」は英語での発音だ。でも、厳密に英語発音を拾うとすれば「マジェラン」が近いかもしれないが、やっぱり、広く膾炙しているのは「マゼラン」という表記だろう。でも、実は彼はポルトガル人だ。ポルトガル語で発音すると、「マガリャンイス」になる。スペイン語で発音すれば「マガリャネス」だ。このように、地域によって呼び方が若干、異なることもある。「マゼランはポルトガル人なのだから、マガリャンイスだろう」という選択をする人もいるし、「普及してよく知られているのはマゼランの方だ」という考え方もある。ウェブサイトの場合、SEOを考えたり、検索を考えたりすれば、一般に膾炙した表記の方が圧倒的に有利だ。
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そもそも、カタカナにしたって、それはあくまでも近似的なもので、本来の諸外国語の発音を完全には再現できない。そう割り切った上で、極力、原語の発音に近いものを拾っていくしかない。最近では、google翻訳など、発音機能を備えたプログラムが普及してきたので、現時点では、そういうので逐次、発音させて、耳で確認しながら、国際音声記号(IPA)を援用しながら、独断と偏見でカタカナ化しているのが実情だ。
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結局、そういうカタカナ化の限界があるので、カタカナ化する前の原語をそのまま事典に載せている。そうすれば、ウェブサイト「ファンタジィ事典」にアクセスしてきた訪問者が、各自で正しい発音について考えることができる。カタカナにしたときに「アップル」だろうが「アポー」だろうが『apple』という原語が記載されていれば、正確な言語は『apple』なので、資料性は高くなる。それが本ウェブサイトの基本的な方針だ。
ただ、そうなると、ビルマ文字やハングル、アラビア文字、果ては楔形文字や古代エジプト文字、アヴェスター文字なんかを載せる必要が出てきて、畢竟、ウェブサイトの多言語化を目指すことになる。結果、訪問者の環境によっては表示されない文字が出てきて、文字化けすることになる。
Last update: 2020/04/01