ヘドリー・コウ
分 類 | イギリス伝承 |
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Hedley Kow(ヘドリー・コウ)《ヘッドリーの牛っこ》【英語】 | |
容 姿 | さまざまなものに化ける妖精。ウシの姿に変身することが多い。 |
特 徴 | 悪戯好き。いろいろ変身して人々を化かす。 |
出 典 | - |
人を化かすイギリスの悪戯妖精!?
ヘドリー・コウはイングランド伝承に登場する悪戯妖精。ノーサンバーランドのヘドリー村に出没し、さまざまな姿に化けて悪ふざけをする。その中でも、特にウシの姿に化けるのが得意で、ほとんどウシの姿で出現するため、《ヘドリーの牛っこ》と呼ばれている。
へドリー・コウは絶えず、悪ふざけをする。たとえば、一束の藁に化けて老婆の前に出現し、老婆が拾うと、途端にものすごい重さになる。すると藁は生き物になって足を引きずりながら、高笑いとともに走り去る。あるいは牝ウシに化けて野原を駆け回り、延々と乳しぼりの娘に後を追い掛けさせ、脚でバケツを引っ繰り返して、ミルクをこぼし、そして高笑いとともに消える。出産のときに産婆を呼びに行く人を邪魔したり、ときには若者の前に恋人の姿に変身して現れ、ちょっと前を歩き、追い掛ける若者を道に迷わせて、沼地にはめたりもする。いずれにしても、ヘドリー・コウは悪戯好きで、さまざまなものに変身して、人々を化かす。
イングランドでは、ある貧しい女性がヘドリー・コウと出会った不思議な話がよく知られている。あるとき、女性は道端で鍋を発見した。穴が空いているので捨てようかと思ったが、植木鉢にすれば使えると思い直して近寄った。すると中に金貨がたくさん詰まっている。彼女はショールで包むと、引きずって運び始めた。しばらくして振り返ると、鍋が銀の塊になっている。彼女は、金貨は盗まれるが、銀なら盗まれないのでよいと思って、引きずり続けた。またしばらくして振り返ると、銀の塊は鉄の塊になっていた。彼女は、これで簡単に換金できるようになったと喜んだ。そしてしばらく運んでいくと、今度は鉄の塊は岩になっていた。彼女はドアを抑えておくのに役に立つと言って運び続けた。家に帰ってくると、岩は生き物に姿を変え、笑いながら、駆けていった。彼女は、ヘドリー・コウを間近に見ることができて幸運だと感じたという話である。次々と姿を変えて女性を困らせようとするヘドリー・コウに対して、何をされても喜ぶ女性が対照的な物語である。
《参考文献》
- 『Truth In Fantasy 事典シリーズ 2 幻想動物事典』(著:草野巧,画:シブヤユウジ,新紀元社,1997年)
Last update: 2021/03/02