グライグ・アヌーン

分 類イギリス伝承(ウェールズ)
名 称 Gwraig Annwn(グライグ・アヌーン)《アヌーンの女》【ウェールズ語】
複数形:Gwragedd Annwn(グラーゲズ・アヌーン)【ウェールズ語】
容 姿金髪の美しい女性の妖精。
特 徴湖に棲む。パンを好み、人間と結婚することもある。3回叩くと妖精の国に帰る。
出 典

湖の乙女は3回叩いたら消えてしまう!?

グライグ・アヌーンはウェールズ伝承に登場する湖の妖精。海外の書籍では、複数形で紹介されることの方が多い。アヌーン、あるいはアンヌーンは妖精が暮らす異郷のことである。長い巻き毛の金髪の美しい女性の姿で、しばしば、人間との結婚譚が知られる。

ア・ヴァン・ヴァッハ湖の伝承では、マズヴァイ村のある男が湖畔で髪をとかすグライグ・アヌーンと出会った。非常に美しく、心惹かれた彼はパンを差し出して誘うが、妖精はパンを固く焼きすぎだと袖に振る。次の日、男はもう一度、生焼けのパンを持っていくが、妖精は今度は柔らかすぎると断る。3日目、男がパンを持っていくと、妖精はそれならばよいと湖に消えた。湖中から3人の妖精が現れた。一人は気品のある老人で、両脇には美しい妖精。老人は「お前が恋した方を当てられれば娘をやる」と言う。二人の妖精は瓜二つで男にはどちらも同じに見える。しかし、一人が足を動かしたときに見慣れたサンダルの紐が見え、男は妖精を見分けることができた。こうして、男は妖精と結婚することになる。老人は一息で数えられるだけの牛を与えると、「決して娘をぶってはならぬ。3回ぶったら娘も牛も消える」と告げた。男は3人の子供をもうけ、幸せに暮らした。しかし、彼女はしばしば妖精じみた奇妙な振る舞いをした。たとえば、結婚式のような喜ばしい場面でメソメソと泣いたり、葬儀のようなシーンでゲラゲラ笑ったりした。このような奇行に、男はつい彼女を叩き、そして3回目が訪れた。その瞬間、女も連れてきた牛も、牛が産んだ子牛も、吊るしてある牛肉も、全てが妖精の国に消えてしまった。

ケルト研究の学者ジョン・リースによれば、この話には続きがあって、3人の息子たちだけは、その後も湖畔でグライグ・アヌーンと会っていたという。そして、薬草の知識を授けられ、マズヴァイ村の名医たちになったとされる。

* * *

なお、草野巧の『幻想動物事典』では、単に「グウレイグ(Gwraig)」として紹介されているが、これでは単にウェールズ語の《女性》という意味になってしまう。

《参考文献》

Last update: 2020/04/14

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